第7回 心臓性急死研究会 冠攣縮性狭心症の病理組織学的検討
冠攣縮による突然死例の冠動脈病理組織像を,5例の冠攣縮性狭心症の剖検例と併せて報告する. 症例:55歳,男性.労作兼安静時狭心症.自然発作時に,心電図でのV2からV6のST上昇とT波の尖鋭化を伴う鈍縁枝の完全閉塞と前下行枝近位部の75%狭窄が認められ,ISDNにより寛解した.この約13カ月後に,胸痛を訴えた後,突然死した.冠攣縮部位は正円形の中膜平滑筋層にもかかわらず,内腔はwaving状の著しい変形をきたしていた.また,内膜には主に線維性の肥厚が認められ,wavingを呈する内弾性板が特徴的であった.これらの所見は,程度は軽いものの前下行枝の近位部と対角枝にも認められた.なお,冠動脈内血栓や...
Saved in:
Published in | 心臓 Vol. 27; no. Supplement6; pp. 8 - 12 |
---|---|
Main Authors | , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
公益財団法人 日本心臓財団
1995
|
Online Access | Get full text |
ISSN | 0586-4488 2186-3016 |
DOI | 10.11281/shinzo1969.27.Supplement6_8 |
Cover
Summary: | 冠攣縮による突然死例の冠動脈病理組織像を,5例の冠攣縮性狭心症の剖検例と併せて報告する. 症例:55歳,男性.労作兼安静時狭心症.自然発作時に,心電図でのV2からV6のST上昇とT波の尖鋭化を伴う鈍縁枝の完全閉塞と前下行枝近位部の75%狭窄が認められ,ISDNにより寛解した.この約13カ月後に,胸痛を訴えた後,突然死した.冠攣縮部位は正円形の中膜平滑筋層にもかかわらず,内腔はwaving状の著しい変形をきたしていた.また,内膜には主に線維性の肥厚が認められ,wavingを呈する内弾性板が特徴的であった.これらの所見は,程度は軽いものの前下行枝の近位部と対角枝にも認められた.なお,冠動脈内血栓や心筋梗塞の所見は認められなかった. 5例の冠攣縮性狭心症の剖検では,冠攣縮部位には,軽度なものから高度なものまでバラツキはあるものの,全例で動脈硬化性変化を認めた.また,ほぼ正常冠動脈像を呈するにもかかわらず,高度な動脈硬化像を認める例もあり,冠動脈造影は組織学的な狭窄度を過小評価する傾向がみられた. 冠攣縮発生部位は,種々の程度の動脈硬化像とともに,線維性変化を主とする内膜の肥厚とよく保たれた中膜平滑筋層が特徴的である.また,内腔の著しい変形やwaving状の内弾性板は冠攣縮発生時の組織像をとらえていると考えられ,突然死の冠動脈検索時には,これらの変化の有無にも留意すべきである. |
---|---|
ISSN: | 0586-4488 2186-3016 |
DOI: | 10.11281/shinzo1969.27.Supplement6_8 |