二次元三角格子上で実現したスピンの無秩序な量子状態(最近の研究から)

従来型の磁気秩序を抑えることで現れる新奇な状態への興味から,幾何学的フラストレーションを持つ系が近年注目を集めている.その中で最も基本的な三角格子反強磁性体はこれまで盛んに研究されてきたが,そのほとんどは三次元性を通じて低温で120度低温で120度構造に代表される磁気的長距離秩序を示す.そうした中,最近我々は層状カルコゲナイド化合物NiGa_2S_4が極めて二次元性の高い反強磁性相関を持つS=1の三角格子スピン系であることを発見した.興味深いことに,この物質は低温まで反強磁性の長距離秩序を示さず,代わりに何らかのコヒーレンスを持つスピン無秩序状態が現れることが分かってきた.本概説ではこのNiG...

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Published in日本物理学会誌 Vol. 62; no. 4; pp. 254 - 259
Main Authors 南部, 雄亮, 中辻, 知, 前野, 悦輝
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本物理学会 05.04.2007
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Summary:従来型の磁気秩序を抑えることで現れる新奇な状態への興味から,幾何学的フラストレーションを持つ系が近年注目を集めている.その中で最も基本的な三角格子反強磁性体はこれまで盛んに研究されてきたが,そのほとんどは三次元性を通じて低温で120度低温で120度構造に代表される磁気的長距離秩序を示す.そうした中,最近我々は層状カルコゲナイド化合物NiGa_2S_4が極めて二次元性の高い反強磁性相関を持つS=1の三角格子スピン系であることを発見した.興味深いことに,この物質は低温まで反強磁性の長距離秩序を示さず,代わりに何らかのコヒーレンスを持つスピン無秩序状態が現れることが分かってきた.本概説ではこのNiGa_2S_4とその不純物効果の実験結果について紹介する.
ISSN:0029-0181
2423-8872
DOI:10.11316/butsuri.62.4_254