富山湾におけるブリ,スルメイカ,ホタルイカの 漁況と日本海の海洋環境との関係

富山湾では400年以上も前から定置漁業が盛んであり,暖水性の回遊魚を中心に漁獲してきた.主要漁獲物であるブリ,スルメイカおよびホタルイカについて,漁獲変動と海洋環境との関係を調べた.ブリでは,日本周辺海域の海水温の上昇に伴い分布域がオホーツク海まで拡大し,2000年代後半以降に北海道の漁獲量が急増した.また,南下期である冬季の富山湾への来遊状況は,12月に山形県沖が暖かく能登半島北西沖が冷たい水塊配置のときに好漁となる傾向が認められた.富山県沿岸で1月~3月に漁獲されるスルメイカは,日本海北部海域の1月期における水温が低い年に南下経路が沿岸よりとなり,漁獲量が多くなる傾向があった.日本海北部海...

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Published in沿岸海洋研究 Vol. 58; no. 1; pp. 81 - 86
Main Authors 小塚, 晃, 辻本, 良, 北川, 慎介, 南條, 暢聡
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本海洋学会 沿岸海洋研究会 2020
Subjects
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ISSN1342-2758
2434-4036
DOI10.32142/engankaiyo.2020.8.014

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Summary:富山湾では400年以上も前から定置漁業が盛んであり,暖水性の回遊魚を中心に漁獲してきた.主要漁獲物であるブリ,スルメイカおよびホタルイカについて,漁獲変動と海洋環境との関係を調べた.ブリでは,日本周辺海域の海水温の上昇に伴い分布域がオホーツク海まで拡大し,2000年代後半以降に北海道の漁獲量が急増した.また,南下期である冬季の富山湾への来遊状況は,12月に山形県沖が暖かく能登半島北西沖が冷たい水塊配置のときに好漁となる傾向が認められた.富山県沿岸で1月~3月に漁獲されるスルメイカは,日本海北部海域の1月期における水温が低い年に南下経路が沿岸よりとなり,漁獲量が多くなる傾向があった.日本海北部海域の水温上昇は,冬季の富山湾へのスルメイカの来遊量を減少させる要因となると考えられる.ホタルイカでは,2008年まで,日本海における主産卵場である山陰沖の5月の水温が高いと,翌年の富山湾漁獲量が多くなる傾向が認められた.しかし,2009年以降,山陰沖水温環境指標と富山湾漁獲量との間の関係性が悪くなり,その要因の解明が必要となっている.これらの種は,東シナ海や日本海を産卵場とし,日本海を広く回遊する.対馬暖流の勢力は,加入量や仔稚魚の分散にも関与し,富山湾への来遊は,日本海の水温や水塊配置に大きく依存している.地球温暖化やレジームシフトによる海洋環境の変化により,日本海や東シナ海において産卵場や回遊状況が変化し,長期的に富山湾の漁況が変化していくことが懸念される.
ISSN:1342-2758
2434-4036
DOI:10.32142/engankaiyo.2020.8.014