高分解能飛行時間型質量分析計を用いる空気雰囲気下でのポリプロピレンの発生ガス質量分析
発生ガス質量分析(EGA-MS)は,高分子の昇温加熱による分解挙動を観測する手法として活用されている.最近,高分子の実使用条件に即した空気雰囲気下でのEGAにより生成した分解生成物をMSに導入する前に,ヘリウムを追加して空気を稀釈(きしゃく)することにより感度の低下を防ぐ方法が開発された.しかし,MSとして一般に用いられる四重極型MSでは質量分解能が制約されるため,整数質量が同じ熱分解生成物と酸化分解生成物が区別できない.そこで本研究では,検出部に精密質量を計測することができる高分解能飛行時間型MSを備えたシステムにより,ポリプロピレン(PP)の空気雰囲気下におけるEGA-MS測定を行い,酸化...
Saved in:
Published in | 分析化学 Vol. 71; no. 10.11; pp. 609 - 612 |
---|---|
Main Authors | , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
公益社団法人 日本分析化学会
05.10.2022
|
Online Access | Get full text |
ISSN | 0525-1931 |
DOI | 10.2116/bunsekikagaku.71.609 |
Cover
Summary: | 発生ガス質量分析(EGA-MS)は,高分子の昇温加熱による分解挙動を観測する手法として活用されている.最近,高分子の実使用条件に即した空気雰囲気下でのEGAにより生成した分解生成物をMSに導入する前に,ヘリウムを追加して空気を稀釈(きしゃく)することにより感度の低下を防ぐ方法が開発された.しかし,MSとして一般に用いられる四重極型MSでは質量分解能が制約されるため,整数質量が同じ熱分解生成物と酸化分解生成物が区別できない.そこで本研究では,検出部に精密質量を計測することができる高分解能飛行時間型MSを備えたシステムにより,ポリプロピレン(PP)の空気雰囲気下におけるEGA-MS測定を行い,酸化分解生成物と熱分解生成物のそれぞれに特徴的なフラグメントイオン(CH3CO+; m/z 43.018及びCH3CH2CH2+; m/z 43.054)を識別して解析することに成功した.また,PPの昇温熱分解時の空気流量の影響を調べた結果,流量が増加するほど酸化分解の寄与が大きくなる傾向が確認できた. |
---|---|
ISSN: | 0525-1931 |
DOI: | 10.2116/bunsekikagaku.71.609 |