膵体部に発生した癌肉腫の1例

症例は58歳の男性で,上腹部の痛みと体重減少にて近医受診し,腹部USにて膵体部に低エコー腫瘤を認め当院に紹介された.腹部CTにて膵体部に5cm大の造影効果の乏しい腫瘍と,末梢膵管の著明な拡張を認めたため膵体部癌と診断し,膵体尾部切除を行った.病理組織学的に腫瘍は主膵管および周囲の小範囲に浸潤性膵管癌を認める以外,浸潤部のほとんどに広範な異型の強い紡錘形細胞の増殖と線維化を認めた.各種免疫染色検査においてこれらの紡錘形細胞は間葉系マーカーに陽性を示した.以上より,膵体部に発生した癌肉腫と診断した.術後6か月経過したが,再発兆候はなく,補助化学療法としてgemcitabine投与を行っている.膵癌...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 44; no. 2; pp. 165 - 170
Main Authors 藤本, 大裕, 戸川, 保, 藤田, 邦博, 佐藤, 保則, 石田, 誠
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 01.02.2011
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:症例は58歳の男性で,上腹部の痛みと体重減少にて近医受診し,腹部USにて膵体部に低エコー腫瘤を認め当院に紹介された.腹部CTにて膵体部に5cm大の造影効果の乏しい腫瘍と,末梢膵管の著明な拡張を認めたため膵体部癌と診断し,膵体尾部切除を行った.病理組織学的に腫瘍は主膵管および周囲の小範囲に浸潤性膵管癌を認める以外,浸潤部のほとんどに広範な異型の強い紡錘形細胞の増殖と線維化を認めた.各種免疫染色検査においてこれらの紡錘形細胞は間葉系マーカーに陽性を示した.以上より,膵体部に発生した癌肉腫と診断した.術後6か月経過したが,再発兆候はなく,補助化学療法としてgemcitabine投与を行っている.膵癌肉腫は極めてまれでまた治癒切除が施行された場合でも再発し,急速に進行し予後不良とされている.今後は化学療法を含めた集学的治療の確立のため,さらなる症例数の蓄積が必要と考えられた.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.44.165