空腹時血糖に及ぼすシベンゾリン及びジソピラミド投与の影響

「緒言」シベンゾリンおよびはジソピラミドはVaughan Williams分類Ia群に属する抗不整脈薬の中で繁用されている薬剤であるが, その副作用として低血糖の発現が報告されている1-4). この発現機序としては, 膵β細胞のATP感受性K+チャネルの抑制によるインスリン分泌促進が原因であると考えられており, シベンゾリンについてはin vitroで膵β細胞のATP感受性K+チャネルを抑制することが確認されている5). また, 動物実験(in vivo)でシベンゾリンにより, インスリン分泌が増強されるとの報告もある6). さらに, 我々は, 頻脈性不整脈を有する12名の患者についてシベンゾ...

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Published in病院薬学 Vol. 24; no. 5; pp. 541 - 547
Main Authors 高田, 充隆, 浅田, 葉子, 永井, 聡子, 柴川, 雅彦, 金澤, 昭雄, 原納, 優
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本医療薬学会 1998
日本病院薬学会
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Summary:「緒言」シベンゾリンおよびはジソピラミドはVaughan Williams分類Ia群に属する抗不整脈薬の中で繁用されている薬剤であるが, その副作用として低血糖の発現が報告されている1-4). この発現機序としては, 膵β細胞のATP感受性K+チャネルの抑制によるインスリン分泌促進が原因であると考えられており, シベンゾリンについてはin vitroで膵β細胞のATP感受性K+チャネルを抑制することが確認されている5). また, 動物実験(in vivo)でシベンゾリンにより, インスリン分泌が増強されるとの報告もある6). さらに, 我々は, 頻脈性不整脈を有する12名の患者についてシベンゾリン投与時の血糖調節に及ぼす影響を検討した結果, シベンゾリン投与により, FBSが有意に低下するとともに, 空腹時血中インスリン濃度が有意に上昇すること, また, 経口ブドウ糖負荷試験(7590GTT)においてシベンゾリン投与後の血中インスリン値が負荷後60分および120分で有意に上昇することを報告した7). さらに, インスリン感受性試験の結果, シベンゾリンがインスリン感受性を増強しなかったことから, シベンゾリンの低血糖発現機序の主たるものは, このATP感受性K+チャネル抑制を介したインスリン分泌亢進であると考えた. ジソピラミドについても副作用として低血糖が問題となることがあり, シベンゾリンと同様の機序によるものと考えられるが, 通常の臨床用量において, どの程度のインスリン分泌亢進が起こり, 血糖低下が生じるのかは明らかではない. また, 臨床用量における血糖の低下に関するシベンゾリンとの比較についても明らかではない. 今回, 国立循環器病センター外来を受診し, シベンゾリンまたはジソピラミドの投与を受けている患者について, レトロスペクティブに投与前後におけるFBSの変化について調査し, 両薬剤の臨床用量における空腹時血糖への影響について検討し, その結果を比較したので報告する.
ISSN:0389-9098
2185-9477
DOI:10.5649/jjphcs1975.24.541