絵野沢 伸ほか(著)「公共的な研究用ヒト組織バンク設立のための検討:国立小児病院における摘出ヒト扁桃リンパ組織バンク構築の試み」(組織培養研究.19:163-183, 2000)に対するコメント: 組織提供者に対するインフォームド・コンセント手続きを中心として

国立小児病院における摘出ヒト扁桃リンパ組織バンクの試料提供者に対するインフォームド・コンセント手続きについて、筋ジストロフィーの遺伝子診断及び遺伝力ウンセリングに関する法的、倫理的、心理・社会的諸問題について検討を行ってきた経験を活かし私見を述べる。患者の直接的利益の実現である「医療ケアを受ける」ことと他者の利益の実現を第一義とする「医学研究の被験者になる」ことの間には決定的な違いがあり、研究参加に対する同意(承諾)は個々人のボランティア精神の発露でしかあり得ない。しかしながら、バンクに提供される組織はこの目的のためにわざわざ採取されるものではなく、医療上必要な手術を行った際の摘出物であること...

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Published in組織培養研究 Vol. 20; no. 1; pp. 5 - 13
Main Author 白井, 泰子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本組織培養学会 31.03.2001
Subjects
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ISSN0912-3636
1881-3704
DOI10.11418/jtca1981.20.1_5

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Summary:国立小児病院における摘出ヒト扁桃リンパ組織バンクの試料提供者に対するインフォームド・コンセント手続きについて、筋ジストロフィーの遺伝子診断及び遺伝力ウンセリングに関する法的、倫理的、心理・社会的諸問題について検討を行ってきた経験を活かし私見を述べる。患者の直接的利益の実現である「医療ケアを受ける」ことと他者の利益の実現を第一義とする「医学研究の被験者になる」ことの間には決定的な違いがあり、研究参加に対する同意(承諾)は個々人のボランティア精神の発露でしかあり得ない。しかしながら、バンクに提供される組織はこの目的のためにわざわざ採取されるものではなく、医療上必要な手術を行った際の摘出物であることから、研究被験者になることと同列に扱うべきか否かについては、考慮すべき問題が数多く残っている。
ISSN:0912-3636
1881-3704
DOI:10.11418/jtca1981.20.1_5