一酸化炭素中毒に対する高気圧酸素治療の現状-全国救命救急センターアンケート調査結果から

【背景・目的】一酸化炭素(以下CO)中毒患者の治療における高気圧酸素(以下HBO)治療の役割に関しては未だ十分にコンセンサスが得られていない。今回全国の救命センターにアンケート調査を行い,CO中毒,とくにHBO治療の現状を把握した。【対象・方法】全国218の救命救急センターにアンケート調査を行い,CO中毒の発生件数,HBO装置の有無や治療方法,頭部MRIの検査状況,さらには遅発性脳症の発症の有無について調査した。【結果】無記名の1施設を除き108施設(50%)から有効回答を得た。年間のCO中毒症例数は5-10件が45施設と最も多く,5件未満が38施設と続いた。HBO装置は45施設(42%)で所...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本救急医学会雑誌 Vol. 23; no. 12; pp. 834 - 841
Main Authors 矢澤, 和虎, 野首, 元成, 竹原, 延治, 梅村, 穣, 瀧本, 浩樹, 小川, 新史, 末吉, 孝一郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本救急医学会 15.12.2012
Subjects
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:【背景・目的】一酸化炭素(以下CO)中毒患者の治療における高気圧酸素(以下HBO)治療の役割に関しては未だ十分にコンセンサスが得られていない。今回全国の救命センターにアンケート調査を行い,CO中毒,とくにHBO治療の現状を把握した。【対象・方法】全国218の救命救急センターにアンケート調査を行い,CO中毒の発生件数,HBO装置の有無や治療方法,頭部MRIの検査状況,さらには遅発性脳症の発症の有無について調査した。【結果】無記名の1施設を除き108施設(50%)から有効回答を得た。年間のCO中毒症例数は5-10件が45施設と最も多く,5件未満が38施設と続いた。HBO装置は45施設(42%)で所有しており,うち40施設がCO中毒でHBO治療を行うと答えた。CO中毒全例でHBO治療を行う12施設,遅発性脳症が発生したら行う12施設,残りは臨床症状から決めるであった。回数も1回:7施設,初日2回の3日間(計4回):9施設,一週間で計7回:7施設と様々であった。全施設対象に行った調査で,90%の施設で頭部MRIを施行していた。調査した1年間では計12例の遅発性脳症の報告があった。全例が暴露後30日以内に発症した。HBO治療は急性期CO中毒に対するHBO治療目的で転院した1例を含め8例で施行されていたが,回数は1-80回と差があった。【結語】CO中毒患者が主に搬送される全国の救命救急センターにおいてもHBO装置の所有率は4割余りで,その施行法も施設間による差が大きく,CO中毒においてHBO治療は確立されているとは言えなかった。本邦におけるHBO治療の治療指針が望まれ,そのための質の高い多施設研究が必要と考えられる。
ISSN:0915-924X
1883-3772
DOI:10.3893/jjaam.23.834