進行胃癌に随伴した後天性血友病Aによって術後止血困難となった1例

症例は80歳の男性で,進行胃癌と診断され当科紹介となった.診断前から体幹部に原因不明の痛みを伴う皮下出血を認めていた.血液検査ではAPTT単独延長パターンの凝固異常を認めていたが,腫瘍出血による変化と考えていた.術前診断T3N0M0c Stage IIBの進行胃癌に対して腹腔鏡下幽門側胃切除術D2郭清RY再建を行った.術中,ポート挿入部や郭清部位から持続的なoozingがあり止血操作に難渋した.翌日ドレーン排液が血性に変化し,心肺停止に至った.後出血による出血性ショックと判断し,心肺蘇生を行いつつ緊急開腹止血術を2回行うも出血は持続した.大量出血からdisseminated intravasc...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 58; no. 7; pp. 383 - 391
Main Authors 遠藤, 樹希, 大森, 隼人, 中本, 叶泰, 矢嶋, 文, 池亀, 昂, 渡邊, 英樹, 古屋, 一茂, 安留, 道也, 飯室, 勇二, 羽田, 真朗
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 01.07.2025
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Summary:症例は80歳の男性で,進行胃癌と診断され当科紹介となった.診断前から体幹部に原因不明の痛みを伴う皮下出血を認めていた.血液検査ではAPTT単独延長パターンの凝固異常を認めていたが,腫瘍出血による変化と考えていた.術前診断T3N0M0c Stage IIBの進行胃癌に対して腹腔鏡下幽門側胃切除術D2郭清RY再建を行った.術中,ポート挿入部や郭清部位から持続的なoozingがあり止血操作に難渋した.翌日ドレーン排液が血性に変化し,心肺停止に至った.後出血による出血性ショックと判断し,心肺蘇生を行いつつ緊急開腹止血術を2回行うも出血は持続した.大量出血からdisseminated intravascular coagulation(DIC)に移行,術後2日目に永眠された.血液疾患の関与を疑い精査をすると,第VIII因子のインヒビターが検出され,後天性血友病Aと診断した.術前に病的な血液凝固異常に気付くことができず,止血困難となった症例を経験したため報告する.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.2024.0025