TRT・TATへの期待—基礎研究・開発研究の観点から

標的アイソトープ治療(TRT)は細胞殺傷性の粒子放射線を放出するラジオアイソトープ(RI)を用いた治療で,癌治療の選択肢の一つとして確立している。ヨウ素131が甲状腺疾患の治療に用いられて以来,TRTは長い歴史を持つ治療法である。ヨウ素131やイットリウム90のようなβ線放出核種が主にTRTで使われてきた。放射化学や加速器工学の最近の進歩により,標的α線治療(TAT)が癌治療の選択肢として注目を集めている。α線はβ線と比較して高い細胞殺傷能を有する。また,α線は短い飛程である。この性質により,標的細胞にα線が送達された場合,周囲組織を正常に保ちながら標的細胞だけを殺傷することが出来る。TATの...

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Published inRADIOISOTOPES Vol. 69; no. 6; pp. 207 - 212
Main Authors 李, 惠子, 長谷川, 純崇
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本アイソトープ協会 15.06.2020
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Summary:標的アイソトープ治療(TRT)は細胞殺傷性の粒子放射線を放出するラジオアイソトープ(RI)を用いた治療で,癌治療の選択肢の一つとして確立している。ヨウ素131が甲状腺疾患の治療に用いられて以来,TRTは長い歴史を持つ治療法である。ヨウ素131やイットリウム90のようなβ線放出核種が主にTRTで使われてきた。放射化学や加速器工学の最近の進歩により,標的α線治療(TAT)が癌治療の選択肢として注目を集めている。α線はβ線と比較して高い細胞殺傷能を有する。また,α線は短い飛程である。この性質により,標的細胞にα線が送達された場合,周囲組織を正常に保ちながら標的細胞だけを殺傷することが出来る。TATの開発研究は盛んになりつつある。
ISSN:0033-8303
1884-4111
DOI:10.3769/radioisotopes.69.207