狭山丘陵におけるニホンジカの生息記録(2019–2023年)

ニホンジカ(Cervus nippon)のマネジメントにおいて,分布拡大地域における定着や個体数増加の兆候の把握は重要である.狭山丘陵には明治時代以降,ニホンジカが生息していなかったが,2022年にニホンジカの目撃情報が複数得られた.そこで,2019年以降の狭山丘陵におけるニホンジカの生息情報をまとめた.狭山丘陵周辺の自治体,郷土博物館,公園等の管理団体等に合計41回の聞き込み調査を行ったところ,2022年6月から11月にかけて合計19件の目撃情報と7件の撮影情報が得られた.目撃情報は狭山丘陵の西端から東端にかけて全域で得られた.また,2021年以降2地区でカメラトラップ調査を行ったところ,2...

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Published in哺乳類科学 Vol. 64; no. 2; pp. 185 - 193
Main Authors 渡邉, 英之, 吉原, 正人, 石山, 遥香, 梅崎, ゆず, 西川, 大生, 風間, 健太郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本哺乳類学会 2024
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Summary:ニホンジカ(Cervus nippon)のマネジメントにおいて,分布拡大地域における定着や個体数増加の兆候の把握は重要である.狭山丘陵には明治時代以降,ニホンジカが生息していなかったが,2022年にニホンジカの目撃情報が複数得られた.そこで,2019年以降の狭山丘陵におけるニホンジカの生息情報をまとめた.狭山丘陵周辺の自治体,郷土博物館,公園等の管理団体等に合計41回の聞き込み調査を行ったところ,2022年6月から11月にかけて合計19件の目撃情報と7件の撮影情報が得られた.目撃情報は狭山丘陵の西端から東端にかけて全域で得られた.また,2021年以降2地区でカメラトラップ調査を行ったところ,2022年7月から10月にかけて合計3件の動画が撮影された.目撃情報,撮影情報のうち個体情報が記録されているものはいずれも一尖の角または袋角を有していた.また,短期間に情報が集中していたことから,若齢オス1頭が2022年に一時的に生息したがすでに移出または死亡している可能性が示唆された.狭山丘陵においてニホンジカはかつての在来哺乳類相の構成種であった.一方で,市街地に囲まれた狭山丘陵にシカが生息した場合,住宅地出没など様々な軋轢が生じる可能性がある.したがって,今後は狭山丘陵のニホンジカに対するマネジメント指針を定めるとともに継続的なモニタリングが必要であると考える.
ISSN:0385-437X
1881-526X
DOI:10.11238/mammalianscience.64.185