深部静脈血栓症を有する先天性ATIII欠乏症を併存したS状結腸癌の1例

症例は81歳,男性.下腹部痛を主訴に外来受診.S状結腸癌と診断された.左下肢深部静脈血栓症(以下DVT)の既往があり,先天性antithrombin III(以下ATIII)欠乏症と診断され,以後ワーファリン内服中であった.下肢magnetic resonance venographyでは左総腸骨静脈に血栓を認め,周術期の血栓塞栓症発症のリスクが高いと判断した.周術期はワーファリン内服を中止し,へパリンおよびATIII製剤を使用した.また,肺塞栓症予防のため一時的に下大静脈(IVC)フィルターを留置した.手術はトラブルなく終了し,経過良好にて術後22日目退院となった.先天性ATIII欠乏症はま...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 73; no. 5; pp. 1174 - 1179
Main Authors 奥村, 拓也, 甲賀, 淳史, 岡本, 和哉, 鈴木, 憲次, 川辺, 昭浩, 山下, 公裕
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2012
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.73.1174

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Summary:症例は81歳,男性.下腹部痛を主訴に外来受診.S状結腸癌と診断された.左下肢深部静脈血栓症(以下DVT)の既往があり,先天性antithrombin III(以下ATIII)欠乏症と診断され,以後ワーファリン内服中であった.下肢magnetic resonance venographyでは左総腸骨静脈に血栓を認め,周術期の血栓塞栓症発症のリスクが高いと判断した.周術期はワーファリン内服を中止し,へパリンおよびATIII製剤を使用した.また,肺塞栓症予防のため一時的に下大静脈(IVC)フィルターを留置した.手術はトラブルなく終了し,経過良好にて術後22日目退院となった.先天性ATIII欠乏症はまれな疾患であるが,外科手術は血栓塞栓症発症の誘因となる.本例のように術前DVTを確認した症例であっても,ヘパリン・ATIII製剤,一時的IVCフィルターを用いることで肺塞栓を予防し手術に臨むことができる.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.73.1174