肝膿瘍を契機に発見された若年性直腸癌の1例

症例は36歳,女性.発熱・上腹部痛を主訴に当院受診.血液データでの白血球数,CRPの上昇とともに,腹部CT,超音波にて肝後区域に多発性の嚢胞性腫瘤を認め,肝膿瘍の診断で緊急入院となり経皮経肝膿瘍ドレナージ(PTAD:percutaneous transhepatic abscess drainage)を施行した.CTにて直腸壁肥厚を指摘されたため大腸内視鏡を行ったところ,直腸Rsに2型病変を認め高分化型腺癌の診断であった.肝膿瘍の穿刺液の細胞診はclass2であり,PTADおよび抗生剤投与にて膿瘍が軽快したことから,膿瘍内に肝転移は伴わないと判断した.膿瘍消退後,低位前方切除を施行し,tub1...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 73; no. 5; pp. 1190 - 1194
Main Authors 坂田, 宏樹, 中沢, 祥子, 高橋, 里奈, 白木, 孝之, 豊田, 宏之, 小山, 広人
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2012
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Summary:症例は36歳,女性.発熱・上腹部痛を主訴に当院受診.血液データでの白血球数,CRPの上昇とともに,腹部CT,超音波にて肝後区域に多発性の嚢胞性腫瘤を認め,肝膿瘍の診断で緊急入院となり経皮経肝膿瘍ドレナージ(PTAD:percutaneous transhepatic abscess drainage)を施行した.CTにて直腸壁肥厚を指摘されたため大腸内視鏡を行ったところ,直腸Rsに2型病変を認め高分化型腺癌の診断であった.肝膿瘍の穿刺液の細胞診はclass2であり,PTADおよび抗生剤投与にて膿瘍が軽快したことから,膿瘍内に肝転移は伴わないと判断した.膿瘍消退後,低位前方切除を施行し,tub1,A,ly2,v2,n2,stage IIIbの病理診断であった.その後,膿瘍の再燃や癌の再発は認めていない.肝膿瘍症例においては,たとえ40歳未満の若年者であっても,大腸癌が起因となる可能性を念頭においた全身検索が必要である.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.73.1190