肝細胞癌生体肝移植症例における腹部大動脈石灰化の影響

生体肝移植(LDLT)において、人口動態の変化によるドナーおよびレシピエントの高齢化が新たな課題となっている。加齢に伴い増加する腹部大動脈石灰化(AAC)は、生体肝移植全体の予後および胆道合併症と関連することが示されているが、肝細胞癌(HCC)移植患者に限った解析は未だ報告されていない。今回我々は、HCC移植患者においてAACが長期予後へ与える影響を明らかにするため、HCCに対してLDLTを受けた患者75人のデータを用いて解析を行った。レシピエントAAC(rAAC)は、5年生存率(OS)においては正常群と同等であり(p=0.57;正常群74.1%、高rAAC群67.9%)、5年再発率(RR)の...

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Published in移植 Vol. 59; no. Supplement; p. s338_3
Main Authors 田原, 裕之, 田中, 友加, 長ケ原, 一也, 大平, 真裕, 坂井, 寛, 別木, 智昭, 今岡, 洸輝, 井手, 健太郎, 中野, 亮介, 今岡, 祐輝, 小林, 剛, 三枝, 義尚, 大段, 秀樹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本移植学会 2024
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ISSN0578-7947
2188-0034
DOI10.11386/jst.59.Supplement_s338_3

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Summary:生体肝移植(LDLT)において、人口動態の変化によるドナーおよびレシピエントの高齢化が新たな課題となっている。加齢に伴い増加する腹部大動脈石灰化(AAC)は、生体肝移植全体の予後および胆道合併症と関連することが示されているが、肝細胞癌(HCC)移植患者に限った解析は未だ報告されていない。今回我々は、HCC移植患者においてAACが長期予後へ与える影響を明らかにするため、HCCに対してLDLTを受けた患者75人のデータを用いて解析を行った。レシピエントAAC(rAAC)は、5年生存率(OS)においては正常群と同等であり(p=0.57;正常群74.1%、高rAAC群67.9%)、5年再発率(RR)のみ増加した(p=0.07;正常群8.9%、高rAAC群27.2%)。ドナーAAC(dAAC)は一方で、5年OSを短縮し(p<0.01;正常群77.0%、高ドナーACC群41.7%;図3C)、5年RRは正常群と同等であった(p=0.63;正常群16.6%、高ドナーACC群22.9%)。それぞれの2群間において腫瘍因子に差はなかった。5年RRに対する多変量解析でも同様に、rAAC(HR 11.8, 95%CI:1.59-87.46、p<0.02)、腫瘍個数(HR 1.15, 95%CI:1.04-6.35、p<0.01)、腫瘍径(HR 1.15, 95%CI:1.04-1.28、p<0.01)が危険因子として同定され、dAACは関連がなかった。AACは肝細胞癌肝移植において長期予後に関連し、今後の高齢者適応検討において有用な指標となり得る。
ISSN:0578-7947
2188-0034
DOI:10.11386/jst.59.Supplement_s338_3