当院でフォロー中の肝移植後長期経過症例の問題点と課題

肝移植が日本で行われてから30年以上が経過し、京都大学では2000例以上の肝移植が実施された。手術手技や免疫抑制療法の進歩により術後の生存率は改善し、それに伴い長期経過症例が増加している。長期経過症例では免疫抑制療法による慢性臓器障害があり、腎機能低下や心血管疾患のリスクが高まり、また、肝臓の慢性拒絶反応や再発性肝疾患も問題となっている。さらに、長期免疫抑制療法によって新たな癌が発生するde novo発癌も報告されており、リンパ腫や大腸癌などの悪性腫瘍を経験している。肝移植患者が高齢化することにより、認知症、パーキンソン病といった神経精神疾患を合併することもあり、服薬コンプライアンスの低下や通...

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Published in移植 Vol. 59; no. Supplement; p. s200_1
Main Authors 門野, 賢太郎, 政野, 裕紀, 波多野, 悦朗, 伊藤, 孝司, 影山, 詔一, 小島, 秀信, 内田, 洋一朗, 笠井, 洋祐, 奥村, 晋也, 小木曾, 聡, 穴澤, 貴行
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本移植学会 2024
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ISSN0578-7947
2188-0034
DOI10.11386/jst.59.Supplement_s200_1

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Summary:肝移植が日本で行われてから30年以上が経過し、京都大学では2000例以上の肝移植が実施された。手術手技や免疫抑制療法の進歩により術後の生存率は改善し、それに伴い長期経過症例が増加している。長期経過症例では免疫抑制療法による慢性臓器障害があり、腎機能低下や心血管疾患のリスクが高まり、また、肝臓の慢性拒絶反応や再発性肝疾患も問題となっている。さらに、長期免疫抑制療法によって新たな癌が発生するde novo発癌も報告されており、リンパ腫や大腸癌などの悪性腫瘍を経験している。肝移植患者が高齢化することにより、認知症、パーキンソン病といった神経精神疾患を合併することもあり、服薬コンプライアンスの低下や通院困難な患者の出現などの問題にも直面している。肝機能悪化時の肝生検やフォローアップ肝生検を行う際にも、他疾患の合併により血管が脆弱となり、肝内出血により肝動脈塞栓療法を必要とした症例も経験している。今後の課題として、肝移植後のサーベイランスにde novo発癌や慢性臓器障害の早期発見・早期治療が重要であり、通常の肝移植後の検査に加えた定期的な検診体制を導入し、これらの問題に対処する体制を整えることが必要と感じている。また、新規免疫抑制剤の導入により臓器障害を低減させる工夫や、将来的に免疫抑制剤フリーで術後管理可能となることが、感染症リスクを低減させ、高齢化社会に対応していくことにも重要である。
ISSN:0578-7947
2188-0034
DOI:10.11386/jst.59.Supplement_s200_1