ドナー肝内在性NK細胞を用いた肝臓移植後の補助免疫療法
肝移植後は免疫抑制剤の使用により、感染症や肝細胞癌(HCC)の再発リスクが高まる。肝移植後に投与される免疫抑制剤は主にT細胞およびB細胞を標的とする獲得免疫系を制御するが、自然免疫系のNK細胞などは比較的抑制されないため、肝移植後の感染防御および抗腫瘍免疫において自然免疫系が重要な役割を担う。しかし、肝移植後のNK細胞活性はヒトおよびマウスにおいて低下しており、HCCの再発および菌血症の発症と関連することが報告されている。我々は、肝移植後のHCC再発および菌血症発症の抑制を目的とし、ドナー肝内在性NK細胞を用いた補助免疫療法を開発した。このアロ細胞治療は再生医療等安全確保法の第1種に分類される...
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Published in | 移植 Vol. 59; no. Supplement; p. s142_1 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本移植学会
2024
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Online Access | Get full text |
ISSN | 0578-7947 2188-0034 |
DOI | 10.11386/jst.59.Supplement_s142_1 |
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Summary: | 肝移植後は免疫抑制剤の使用により、感染症や肝細胞癌(HCC)の再発リスクが高まる。肝移植後に投与される免疫抑制剤は主にT細胞およびB細胞を標的とする獲得免疫系を制御するが、自然免疫系のNK細胞などは比較的抑制されないため、肝移植後の感染防御および抗腫瘍免疫において自然免疫系が重要な役割を担う。しかし、肝移植後のNK細胞活性はヒトおよびマウスにおいて低下しており、HCCの再発および菌血症の発症と関連することが報告されている。我々は、肝移植後のHCC再発および菌血症発症の抑制を目的とし、ドナー肝内在性NK細胞を用いた補助免疫療法を開発した。このアロ細胞治療は再生医療等安全確保法の第1種に分類される。HCC再発抑制を目的としたNK細胞療法の第I相試験を日本で24例、米国で17例施行し、安全性が確認された。また、菌血症発症抑制を目的としたNK細胞療法の第I/II相試験が20例施行されたが、主要評価項目は達成されなかったものの、安全性は確認された。さらに、末梢血造血幹細胞から肝内在性NK様細胞を作成し、肝細胞癌肝切除後の補助免疫療法(再生医療第2種)の臨床試験も開始している。患者自身の細胞を使用することで、個々の患者に適した再生医療が可能となり、治療効果の最大化と副作用の最小化が期待される。 |
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ISSN: | 0578-7947 2188-0034 |
DOI: | 10.11386/jst.59.Supplement_s142_1 |