生体肝移植におけるバシリキシマブの有用性についての検討
【背景】バシリキシマブ(Bx)は、術前腎機能障害の肝移植患者に対して投与し、タクロリムスの開始を遅らせることが可能となるが、生体肝移植において実際の腎機能保護効果や、拒絶や感染のリスクに対しての報告は少ない。今回、生体肝移植におけるBx投与の有用性を明らかにすることを目的とした。【方法】2008年6月から2023年6月まで当科で行った生体肝移植222例を対象とし、Bx投与群(32例)と非投与群(190例)を後方視的に検討した。【結果】Bx投与群で術前Crea値 (1.67 vs 0.77 mg/dl p<0.001)やMELDスコア(19 vs 16 p=0.010)が高値であり、移植前ICU...
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Published in | 移植 Vol. 59; no. Supplement; p. s208_2 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本移植学会
2024
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ISSN | 0578-7947 2188-0034 |
DOI | 10.11386/jst.59.Supplement_s208_2 |
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Summary: | 【背景】バシリキシマブ(Bx)は、術前腎機能障害の肝移植患者に対して投与し、タクロリムスの開始を遅らせることが可能となるが、生体肝移植において実際の腎機能保護効果や、拒絶や感染のリスクに対しての報告は少ない。今回、生体肝移植におけるBx投与の有用性を明らかにすることを目的とした。【方法】2008年6月から2023年6月まで当科で行った生体肝移植222例を対象とし、Bx投与群(32例)と非投与群(190例)を後方視的に検討した。【結果】Bx投与群で術前Crea値 (1.67 vs 0.77 mg/dl p<0.001)やMELDスコア(19 vs 16 p=0.010)が高値であり、移植前ICU管理の割合が高く(28.1 vs 6.3 % p=0.0007)、重症例が多かった。一方で、移植後の急性腎障害発生率はBx投与群で低かった(40.6 vs 66.3% p=0.001)。さらにBx投与群ではCrea値が術前(1.67 mg/dl)と比較し、術後3ヶ月(1.24 mg/dl p=0.009)と術後1年(1.29 mg/dl p=0.04)で有意に低下していた。Bx投与有無での拒絶(6.3 vs 10.5 % p=0.429)や感染(68.8 vs 53.7% p=0.107)発症率に差は認めなかった。術後在院日数(64.5 vs 48 日 p=0.143)に差は認めず、Bx投与群の1年生存率、5年生存率は79.0%、60.9%であり、非投与群の82.1%、71.7%と比較して同等な成績であった(p=0.203)。【結語】生体肝移植において術前腎機能障害を有する重症例についても、Bxを導入することで腎機能を保護し、Bx非投与群と同等の良好な成績を保てると考えられる。 |
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ISSN: | 0578-7947 2188-0034 |
DOI: | 10.11386/jst.59.Supplement_s208_2 |