壁内転移をきたした大腸SM癌の1例

症例は70歳,男性.前医で多発大腸ポリープを指摘され,精査加療目的に当院紹介となった.大腸内視鏡検査では,S状結腸に3つの0-I病変が近接して存在し,いずれも内視鏡的粘膜切除術(EMR)を施行した.病理結果はすべてSM癌で,そのうち2つはSM深部浸潤,かつ脈管侵襲陽性,また1つは低分化成分も含んでいた.追加腸切除の適応と判断し,腹腔鏡下S状結腸切除術を施行した.切除標本では,2つのSM深部浸潤癌のEMR瘢痕に挟まれるように,10mm大の粘膜下結節を認めた.粘膜下結節では,高~中分化管状腺癌を主体とし,一部に低分化な成分を含む腺癌が,粘膜下から漿膜下まで広がっていた.また,中等度の脈管侵襲を伴っ...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本大腸肛門病学会雑誌 Vol. 78; no. 7; pp. 286 - 291
Main Authors 下里, あゆ子, 村田, 祐二郞, 岸田, 由起子, 三宅, 弘章, 土屋, 剛史, 牧内, 里美, 織畑, 光一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人日本大腸肛門病学会 2025
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0047-1801
1882-9619
DOI10.3862/jcoloproctology.78.286

Cover

More Information
Summary:症例は70歳,男性.前医で多発大腸ポリープを指摘され,精査加療目的に当院紹介となった.大腸内視鏡検査では,S状結腸に3つの0-I病変が近接して存在し,いずれも内視鏡的粘膜切除術(EMR)を施行した.病理結果はすべてSM癌で,そのうち2つはSM深部浸潤,かつ脈管侵襲陽性,また1つは低分化成分も含んでいた.追加腸切除の適応と判断し,腹腔鏡下S状結腸切除術を施行した.切除標本では,2つのSM深部浸潤癌のEMR瘢痕に挟まれるように,10mm大の粘膜下結節を認めた.粘膜下結節では,高~中分化管状腺癌を主体とし,一部に低分化な成分を含む腺癌が,粘膜下から漿膜下まで広がっていた.また,中等度の脈管侵襲を伴っていた.以上の結果から,EMRを施行したSM深部浸潤癌の壁内転移と診断した.大腸癌の壁内転移は少なく,しかも早期癌に伴って起きることは極めて稀であるので,若干の文献的考察を加えて報告する.
ISSN:0047-1801
1882-9619
DOI:10.3862/jcoloproctology.78.286