上顎歯槽突起裂および口蓋裂を伴う正中上唇裂の一治験例

初診時年齢6歳11ヵ月の上顎歯槽突起裂および口蓋裂を伴う正中上唇裂に起因する骨格性下顎前突症の患者を,長期にわたり治療,管理する機会を得た。患者は上顎の劣成長と上顎前歯の舌側傾斜を示していた。また,上顎歯列弓の狭窄が認められた。第0段階の治療として,7歳0ヵ月時に拡大装置による歯列弓の拡大を行い,また,chincapによる成長のコントロールを行った。第二段階の治療として,9歳11ヵ月時に舌側弧線装置による前歯部の被蓋の改善を行い0また,上顎骨の前方成長の促進を期待して,上顎前方牽引装置を着用した。そして第三段階の治療として,11歳9ヵ月時にマルチブラケットシステムを用いた治療を非抜歯にて行い,...

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Published in日本口蓋裂学会雑誌 Vol. 28; no. 3; pp. 261 - 270
Main Authors 農端, 俊博, 辻, 準之助, 川本, 達雄, 松本, 尚之, 大矢, 卓志, 飯田, 拓二
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本口蓋裂学会 2003
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ISSN0386-5185
2186-5701
DOI10.11224/cleftpalate1976.28.3_261

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Summary:初診時年齢6歳11ヵ月の上顎歯槽突起裂および口蓋裂を伴う正中上唇裂に起因する骨格性下顎前突症の患者を,長期にわたり治療,管理する機会を得た。患者は上顎の劣成長と上顎前歯の舌側傾斜を示していた。また,上顎歯列弓の狭窄が認められた。第0段階の治療として,7歳0ヵ月時に拡大装置による歯列弓の拡大を行い,また,chincapによる成長のコントロールを行った。第二段階の治療として,9歳11ヵ月時に舌側弧線装置による前歯部の被蓋の改善を行い0また,上顎骨の前方成長の促進を期待して,上顎前方牽引装置を着用した。そして第三段階の治療として,11歳9ヵ月時にマルチブラケットシステムを用いた治療を非抜歯にて行い,上下歯列の咬合の緊密化を図った。その後,咬合の安定が得られたことを確認し,成長発育の終了したと考えられる16歳10ヵ月時に動的治療を終了し,保定を行った。23ヵ月の保定期間中も咬合の安定は得られていた。治療結果より,今回経験した上顎歯槽突起裂および口蓋裂を伴う正中上唇裂の場合,長期間顎外固定装置を使用することにより,効果的な下顎骨の成長コントロールができ,骨格のバランスを保持できることがわかった。しかしながら,上顎前歯の移動に関しては,容易に離開が生ずることに留意する必要があることが示唆された。
ISSN:0386-5185
2186-5701
DOI:10.11224/cleftpalate1976.28.3_261