排便障害をきたした内肛門括約筋由来平滑筋腫の1例

われわれは内肛門括約筋から発生し,坐骨直腸窩を主体に肛門を取り囲むように発生し排便機能障害をきたした平滑筋腫を経験したので報告する.患者は56歳女性.2年前より便が細く,近医より痔核を指摘された.1年前より水様便の失禁が発生したため,その痔核が原因と考え,加療目的に当院を受診した.右肛門縁に弾性硬の腫瘤を体表より蝕知し,その皮膚の色調は暗褐色であった.指診にて肛門の約半周性の腫瘍が疑われ,エコー検査では,3時から8時にかけて比較的境界明瞭なくびれのあるひょうたん型の腫瘍として描出された.CTでは後方主体に肛門を取り囲むように腫瘍を認め,MRIではT1で低信号,T2でやや高信号を呈し周囲との境界...

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Published in日本大腸肛門病学会雑誌 Vol. 78; no. 7; pp. 279 - 285
Main Authors 谷村, 修, 平瀬, りさこ, 別府, 理智子, 荒木, 靖三
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人日本大腸肛門病学会 2025
Subjects
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ISSN0047-1801
1882-9619
DOI10.3862/jcoloproctology.78.279

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Summary:われわれは内肛門括約筋から発生し,坐骨直腸窩を主体に肛門を取り囲むように発生し排便機能障害をきたした平滑筋腫を経験したので報告する.患者は56歳女性.2年前より便が細く,近医より痔核を指摘された.1年前より水様便の失禁が発生したため,その痔核が原因と考え,加療目的に当院を受診した.右肛門縁に弾性硬の腫瘤を体表より蝕知し,その皮膚の色調は暗褐色であった.指診にて肛門の約半周性の腫瘍が疑われ,エコー検査では,3時から8時にかけて比較的境界明瞭なくびれのあるひょうたん型の腫瘍として描出された.CTでは後方主体に肛門を取り囲むように腫瘍を認め,MRIではT1で低信号,T2でやや高信号を呈し周囲との境界が比較的明瞭な腫瘍を両側坐骨直腸窩主体に認めた.生検では平滑筋腫であった.会陰切開にて腫瘍を摘出した.腫瘍は6時方向でくびれを伴い,その近傍の内肛門括約筋と連続し内肛門括約筋由来と思われた.病理結果はSMA, desminともに陽性であり,C-kit, DOG-1は陰性,Ki-67標識率は2%であり多発性平滑筋腫との診断となった.術後1ヵ月で,水様便の漏れは消失しQOLは改善した.内肛門括約筋を原発とすると考えられる排便機能障害を伴った平滑筋腫を経験した.
ISSN:0047-1801
1882-9619
DOI:10.3862/jcoloproctology.78.279