脳死両肺移植術でのドナー心膜による心膜閉鎖の有用性
【背景】肺移植における心膜閉鎖の必要性や手法については一定の見解がない. 当院では以前,胸腺や心膜周囲脂肪織など自己組織を用いて閉鎖していたが, 2020年よりドナー心膜を用いて被覆しており,その有用性について検討した. 【方法】摘出した脳死ドナー肺のトリミングの際に心膜を確保し,付着する脂肪織を除去しておく.心膜閉鎖時,自己心膜の欠損部に間置し,縫合閉鎖している. 2010年12月から2024年1月までに当院で脳死両肺移植を施行した18歳以上の患者のうち, 人工心肺やCentral ECMOを用いた 73例を対象とし, ドナー心膜と自己組織を用いた症例で心膜閉鎖時間や合併症について評価した....
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Published in | 移植 Vol. 59; no. Supplement; p. s296_3 |
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Main Authors | , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本移植学会
2024
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ISSN | 0578-7947 2188-0034 |
DOI | 10.11386/jst.59.Supplement_s296_3 |
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Summary: | 【背景】肺移植における心膜閉鎖の必要性や手法については一定の見解がない. 当院では以前,胸腺や心膜周囲脂肪織など自己組織を用いて閉鎖していたが, 2020年よりドナー心膜を用いて被覆しており,その有用性について検討した. 【方法】摘出した脳死ドナー肺のトリミングの際に心膜を確保し,付着する脂肪織を除去しておく.心膜閉鎖時,自己心膜の欠損部に間置し,縫合閉鎖している. 2010年12月から2024年1月までに当院で脳死両肺移植を施行した18歳以上の患者のうち, 人工心肺やCentral ECMOを用いた 73例を対象とし, ドナー心膜と自己組織を用いた症例で心膜閉鎖時間や合併症について評価した. 【結果】ドナー心膜群21, 自己組織群49例であった(ウシ心膜3例). 年齢, 性別, 背景疾患, 開胸歴に差を認めなかった. 心膜閉鎖時間は有意に短縮した(ドナー心膜:13±2.4,自己組織:19±1.6分,P=0.03).収縮性心膜炎発症はともに1例で外科的処置を要さなかった. 再開胸は8 vs. 22例,術後心不全は1 vs. 2例,いずれも両群に有意差は認めなかった.【結論】ドナー心膜による心膜閉鎖は簡便であり, 再開胸時の整容性も良く, 自己組織と比して有害事象も許容されることから有用と考えられる. |
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ISSN: | 0578-7947 2188-0034 |
DOI: | 10.11386/jst.59.Supplement_s296_3 |