ミニブタを用いたMHC適合腎移植におけるアルゴン吸入の治療効果の検討
背景:貴ガスであるアルゴン(Ar)は、近年種々の細胞保護効果が示され、医療用ガスとしての応用が期待される。過去に我々は、Arがミニブタ肺虚血再灌流障害を抑制することを示したが、腎移植における有用性は明確になってない。本研究ではCLAWN系ミニブタを用いた腎移植におけるArの治療効果を検討した。方法:UW液で5時間保存した腎臓をMHC適合レシピエントに移植した。Ar群(n=2)では再灌流後2時間までの計360分間70%Ar+30%酸素吸入を、対照群(n=4)では70%窒素+30%酸素の吸入を行った。副作用、血清Cr、各種サイトカインの推移、腎生検(再灌流1時間、14日)によりArの有効性を評価し...
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Published in | 移植 Vol. 59; no. Supplement; p. s286_3 |
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Main Authors | , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本移植学会
2024
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ISSN | 0578-7947 2188-0034 |
DOI | 10.11386/jst.59.Supplement_s286_3 |
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Summary: | 背景:貴ガスであるアルゴン(Ar)は、近年種々の細胞保護効果が示され、医療用ガスとしての応用が期待される。過去に我々は、Arがミニブタ肺虚血再灌流障害を抑制することを示したが、腎移植における有用性は明確になってない。本研究ではCLAWN系ミニブタを用いた腎移植におけるArの治療効果を検討した。方法:UW液で5時間保存した腎臓をMHC適合レシピエントに移植した。Ar群(n=2)では再灌流後2時間までの計360分間70%Ar+30%酸素吸入を、対照群(n=4)では70%窒素+30%酸素の吸入を行った。副作用、血清Cr、各種サイトカインの推移、腎生検(再灌流1時間、14日)によりArの有効性を評価した。結果:Ar吸入による血圧変動や麻酔の覚醒遅延などの副作用は認めなかった。対照群のCrピーク値は2.6~6.7 mg/dl(中央値3.4 mg/dl)であり、2例でCr低下が5日、9日まで遷延した(残り2例は3日目以降回復)。一方、Ar群では2例ともに3日目以降でCrは回復した(ピークCr平均2.98 mg/dl)。移植腎の組織学的検査では、Ar群で対照群に比べ軽度な障害であったものの、血清IL-6濃度に明らかな差は認めなかった。結語:50%で腎機能回復が遷延する5時間冷保存腎移植モデルに対し、Ar吸入は速やかな腎機能の回復に寄与することが示唆された。一方で、Arの抗炎症作用は明確ではないことから、今後症例数を重ね治療効果を明確にするとともに、作用機序の解明をはかる。 |
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ISSN: | 0578-7947 2188-0034 |
DOI: | 10.11386/jst.59.Supplement_s286_3 |