生体腎移植後にMMF関連腸炎を発症した1例

症例は55歳女性。ABO血液型不適合・抗ドナー特異的抗体陽性生体腎移植後3ヶ月後に血便と腹痛を主訴に外来受診し、精査加療目的に入院となった。上部消化管内視鏡検査で出血は認めず、下部消化管内視鏡検査で回盲部に打ち抜き潰瘍を認めた。サイトメガロウイルス(CMV)抗原は陰性だったが、CMV腸炎と考え治療を開始した。ミコフェノール酸モフェチル(MMF)を減量し、エベロリムスを開始するなど免疫抑制剤の調整を行ない、元々予防投与を行なっていたバルガンシクロビルを増量した。しかし症状は持続し画像所見も増悪したためガンシクロビル点滴投与、ガンマグロブリン投与、耐性化を懸念しホスカルネットナトリウム水和物への変...

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Published in移植 Vol. 59; no. Supplement; p. s387_3
Main Authors 三宮, 彰仁, 中島, 一朗, 近藤, 晃, 蜂須賀, 健, 小山, 一郎, 中島, 龍一朗, 川瀬, 友則
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本移植学会 2024
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ISSN0578-7947
2188-0034
DOI10.11386/jst.59.Supplement_s387_3

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Summary:症例は55歳女性。ABO血液型不適合・抗ドナー特異的抗体陽性生体腎移植後3ヶ月後に血便と腹痛を主訴に外来受診し、精査加療目的に入院となった。上部消化管内視鏡検査で出血は認めず、下部消化管内視鏡検査で回盲部に打ち抜き潰瘍を認めた。サイトメガロウイルス(CMV)抗原は陰性だったが、CMV腸炎と考え治療を開始した。ミコフェノール酸モフェチル(MMF)を減量し、エベロリムスを開始するなど免疫抑制剤の調整を行ない、元々予防投与を行なっていたバルガンシクロビルを増量した。しかし症状は持続し画像所見も増悪したためガンシクロビル点滴投与、ガンマグロブリン投与、耐性化を懸念しホスカルネットナトリウム水和物への変更も行なったが改善を認めなかった。CMV抗原は何度検査しても陰性であり、血中CMV-DNAも陰性であった。潰瘍底から2回にわたり生検を施行したが核内封入体は認めず、特殊染色でもCMV陽性細胞は認めなかった。腸液中CMV-DNAと粘膜CMV-DNAも陰性であり、CMV腸炎と診断できる根拠がなく、MMFをアザチオプリンに変更したところ症状の改善を認めたため、臨床経過からMMF関連腸炎と診断した。内視鏡検査での所見がCMV腸炎の所見と酷似していたため診断・治療に難渋した。今後同様の症例を診療する際の一助となると考え、若干の文献的考察を加えて報告する。
ISSN:0578-7947
2188-0034
DOI:10.11386/jst.59.Supplement_s387_3