タクロリムス腎症における腎組織内カルニチン代謝異常の同定

【目的】タクロリムス(TAC)により移植腎の短期的な生着率は飛躍的に向上したが、TACによる慢性腎障害(TAC腎症)は移植腎の長期的な生着の弊害となっている。TAC腎症の発症機序は現在まで殆ど明らかにされていない。本研究ではTAC投与による腎組織内の代謝変化に着目し、TAC腎症の機序解明を試みた。【方法】雄性7週齢ICRマウスに0.01%低ナトリウム食を自由摂取させた。7日後にマウスを2群に分け、TAC群には1mg/kg/day相当のTACを浸透圧ポンプにて28日間持続皮下投与し、対照群には生理食塩水を同様の方法で投与した。投与完了後に腎組織を採取し、両群の腎障害の有無を評価した。また両群の腎...

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Published in移植 Vol. 59; no. Supplement; p. s292_1
Main Authors 岩見, 大基, 西田, 翔, 石間, 環, 今井, 靖, 木村, 夏花, 永井, 良三, 相澤, 健一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本移植学会 2024
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ISSN0578-7947
2188-0034
DOI10.11386/jst.59.Supplement_s292_1

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Summary:【目的】タクロリムス(TAC)により移植腎の短期的な生着率は飛躍的に向上したが、TACによる慢性腎障害(TAC腎症)は移植腎の長期的な生着の弊害となっている。TAC腎症の発症機序は現在まで殆ど明らかにされていない。本研究ではTAC投与による腎組織内の代謝変化に着目し、TAC腎症の機序解明を試みた。【方法】雄性7週齢ICRマウスに0.01%低ナトリウム食を自由摂取させた。7日後にマウスを2群に分け、TAC群には1mg/kg/day相当のTACを浸透圧ポンプにて28日間持続皮下投与し、対照群には生理食塩水を同様の方法で投与した。投与完了後に腎組織を採取し、両群の腎障害の有無を評価した。また両群の腎組織に対してメタボローム解析を行った。【結果】腎病理組織ではTAC群にて尿細管と間質の線維化がみられた。メタボローム解析では65種類の代謝物に有意な変化を認めた。そのうち最大割合である27.7%がカルニチンおよびその関連代謝物であった。カルニチン関連代謝物の多くがTAC群にて有意に低値であった。【考察】カルニチンは脂肪酸のβ酸化促進、ミトコンドリア保護作用、抗酸化作用を担う代謝物である。カルニチン減少によるβ酸化の抑制やミトコンドリアの機能低下がTAC腎症の原因となったことが推察される。【結論】メタボローム解析を活用し、TAC腎症の機序の一部を明らかにした。今後、カルニチン及びその関連代謝物に着目し、TAC腎症の発症機序のさらなる解明を進める予定である。
ISSN:0578-7947
2188-0034
DOI:10.11386/jst.59.Supplement_s292_1