肝移植術後に感染症による再入院を要した症例の検討
【はじめに】肝移植レシピエントは免疫抑制剤を終生服用する必要があり、移植後も感染症罹患・重症化の危険性がある。繰り返す入院加療はQOL低下にも直結する。当科において肝移植後に感染症治療のため再入院を必要とした症例の背景を検討した。【対象と方法】2013年から2022年までの直近10年間に施行した生体肝移植146例を後方視的に解析。再入院の追跡期間は移植後5年間とした。【結果】感染症治療のために再入院を要したのは39名(27%)で、延べ89回であった。1年以内が39回、1-3年が30回、3-5年が20回で経時的に新規感染症は減少していた。一人あたりの最大入院回数は12回。観察期間中に感染症の重症...
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Published in | 移植 Vol. 59; no. Supplement; p. s163_1 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本移植学会
2024
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ISSN | 0578-7947 2188-0034 |
DOI | 10.11386/jst.59.Supplement_s163_1 |
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Summary: | 【はじめに】肝移植レシピエントは免疫抑制剤を終生服用する必要があり、移植後も感染症罹患・重症化の危険性がある。繰り返す入院加療はQOL低下にも直結する。当科において肝移植後に感染症治療のため再入院を必要とした症例の背景を検討した。【対象と方法】2013年から2022年までの直近10年間に施行した生体肝移植146例を後方視的に解析。再入院の追跡期間は移植後5年間とした。【結果】感染症治療のために再入院を要したのは39名(27%)で、延べ89回であった。1年以内が39回、1-3年が30回、3-5年が20回で経時的に新規感染症は減少していた。一人あたりの最大入院回数は12回。観察期間中に感染症の重症化で失ったのが1例あった。感染症の内訳は胆管炎が最多で53(60%)、肺炎が10(11%)、サイトメガロウイルス感染が7(8%)、尿路感染が6(7%)、腹膜炎と水痘帯状疱疹ウイルスが4(4%)、その他5(6%)であった。再入院は胆道系疾患に対する肝移植(27% vs 63%, p<0.001)、血液型不適合(29% vs 48%, p=0.05)、胆管空腸吻合(28% vs 100%, p<0.001)、胆道合併症あり(16% vs 71%, p<0.001)で有意に多く、移植前のMELD scoreや周術期重症感染症の有無、出血量、輸血量、慢性腎不全の併存は再入院の因子とはならなかった。【結語】胆道合併症、胆管空腸吻合と関連した胆管炎が感染症による移植後再入院の原因として最多であり、免疫抑制剤の減量や長期加療を見据えた抗菌薬選択が望ましいと考えられた。 |
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ISSN: | 0578-7947 2188-0034 |
DOI: | 10.11386/jst.59.Supplement_s163_1 |