同位元素を用いた地球環境の歴史を尋ねて 温泉水, 地下水への応用

元素分析では区別できない物質について, 水素, 炭素, 酸素などの軽元素の安定同位体分析はなお一層の区別を可能にしてくれる. また, 安定同位体比については有効数字の4桁目, 5桁目を測定するため, 元素分析では検出できない物質の濃度変化の検出をも可能にしてくれる. そのうえ, 安定同位体比は物質を構成する元素の同位体交換や同位体分別により変化するため, 物質の起源の解明やプロセス研究にとって有力な武器となりうる. 温泉水の起源として地下水説が現在のところ大変有力であり, その地下水の起源と流路の解明が精力的に行われている. 他方, 火成作用により地球内部から直接もたらされる, いわゆる&qu...

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Published in日本温泉気候物理医学会雑誌 Vol. 62; no. 1; pp. 7 - 8
Main Author 加藤, 喜久雄
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本温泉気候物理医学会 1998
日本温泉気候物理医学会
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ISSN0029-0343
1884-3697
DOI10.11390/onki1962.62.7

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Summary:元素分析では区別できない物質について, 水素, 炭素, 酸素などの軽元素の安定同位体分析はなお一層の区別を可能にしてくれる. また, 安定同位体比については有効数字の4桁目, 5桁目を測定するため, 元素分析では検出できない物質の濃度変化の検出をも可能にしてくれる. そのうえ, 安定同位体比は物質を構成する元素の同位体交換や同位体分別により変化するため, 物質の起源の解明やプロセス研究にとって有力な武器となりうる. 温泉水の起源として地下水説が現在のところ大変有力であり, その地下水の起源と流路の解明が精力的に行われている. 他方, 火成作用により地球内部から直接もたらされる, いわゆる"処女水"を温泉水から検出したいという願望も強い. これらの研究において, 水そのものを構成する水素酸素の安定同位体(δD, δ18O)測定のみならず, 水に溶存する炭酸物資およびガス中の二酸化炭素(CO2), メタン(CH4)の炭素安定同位体(δ18C)測定が決定的な情報を提供することが多いのである.
ISSN:0029-0343
1884-3697
DOI:10.11390/onki1962.62.7