「パワーアップ型」と「バルクアップ型」筋力トレーニング手段のトレーニング効果の相違 (2) 筋の組織化学的特性および毛細血管分布に着目して

本研究では, パワーアップ型手段とバルクアップ型手段による筋力トレーニング効果の相違を, 健常な一般成人男子11名を対象にして, 筋の組織化学的特性および毛細血管分布の面から検討した.トレーニングには膝伸展運動を用いた.パワーアップ型群 (5名) には, 1RMの90%の負荷で, セット間に3分間の休息をはさんで5セット行わせた (レペティション法) .一方, バルクアップ型群 (6名) には, 1RMの80~40%の負荷で, セット間に30秒~3分間の休息をはさんで9セット行わせた (インターバル法・マルチパウンデッジ法) .両群ともに, これらのトレーニングを週2回, 8週間行わせた. お...

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Published in体力科学 Vol. 47; no. 2; pp. 189 - 197
Main Authors 崔, 鳥淵, 高松, 薫, 増田, 和実, 下條, 仁士, 村岡, 誠
Format Journal Article
LanguageEnglish
Japanese
Published 一般社団法人日本体力医学会 01.04.1998
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ISSN0039-906X
1881-4751
DOI10.7600/jspfsm1949.47.189

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Summary:本研究では, パワーアップ型手段とバルクアップ型手段による筋力トレーニング効果の相違を, 健常な一般成人男子11名を対象にして, 筋の組織化学的特性および毛細血管分布の面から検討した.トレーニングには膝伸展運動を用いた.パワーアップ型群 (5名) には, 1RMの90%の負荷で, セット間に3分間の休息をはさんで5セット行わせた (レペティション法) .一方, バルクアップ型群 (6名) には, 1RMの80~40%の負荷で, セット間に30秒~3分間の休息をはさんで9セット行わせた (インターバル法・マルチパウンデッジ法) .両群ともに, これらのトレーニングを週2回, 8週間行わせた. おもな結果は次の通りである. 1.%Fiber typeには, 両群ともに有意な変化は認められなかった. 2.Fiber areaは, 両群ともに, Type I線維, Type IIA線維, Type IIB線維のいずれの筋線維も有意に肥大したが, 増加率はType IIA線維, Type IIB線維, Type I線維の順に高い値であった.また, バルクアップ型群はパワーアップ型群に比較して, いずれの筋線維においても高い増加率を示した. 3.%Fiber areaは, パワーアップ型群ではいずれの筋線維も顕著な変化は認められなかったが, バルクアップ型群では%area Type II線維, とくに%area Type IIB線維が有意に減少した. 4.CC (Type I) , CC (Type IIA) , CC (Type IIB) は, パワーアップ型群, バルクアップ型群ともにいずれも有意に増加した.しかし, 前者ではCC (Type IIA・Type IIB) がCC (Type I) よりも, 後者ではCC (Type I) がCC (Type IIA・Type IIB) よりもいずれも高い増加率であった.なお, CC (Type I) の増加率は, バルクアップ型群がパワーアップ型群に比較して有意に高い値であった. 5.C/Fiber area (Type I) , C/Fiber area (Type IIA) , C/Fiber area (Type lIB) は, パワーアップ型群, バルクアップ型群ともにいずれも若干減少した. 上述の結果は, パワーアップ型手段では, %Fiber type, %Fiber areaを大きく変化させない方向でType I線維, Type IIA線維, Type IIB線維の各筋線維の肥大を起こさせるのに対して, バルクアップ型手段では, %area Type II線維, とくに%area Type IIB線維を減少させる方向で各筋線維の肥大を起こさせることを示すものである.また, パワーアップ型手段では, Type II線維まわりの毛細血管数の増加をより促進させるのに対して, バルクアップ型手段では, Type I線維まわりの毛細血管数の増加をより促進させることを示すものである.しかし, いずれの手段においても各筋線維まわりの毛細血管の発達は, 筋の肥大に十分にみあうものでないことを示すものである. 著者らは, すでにパワーアップ型手段はおもに筋力・無気的パワーの増大に, バルクアップ型手段はおもに筋肥大および無気的持久力の増大にそれぞれ有効であることを報告したが, 本研究結果はそれらの原因を筋レベルで明らかにする一助になるものと考えられる.
ISSN:0039-906X
1881-4751
DOI:10.7600/jspfsm1949.47.189