中高年住民の心身機能の加齢変化に関する横断的検討

目的 高年齢労働者の増加に伴い,労働災害被災者における高齢者割合が増加している。高齢労働者の労働災害を予防する上で,中年期から高齢期にかけての加齢に伴う心身の機能低下の特徴を理解することが重要である。本研究は中年期から高齢期にかけての心身機能の特徴を明らかにすることを目的とし,中年期から高齢期にかけての労働衛生上の課題について考察する。方法 「国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究(National Institute for Longevity Sciences - Longitudinal Study of Aging:NILS-LSA)」第7次調査(2010–2012年)...

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Published in日本公衆衛生雑誌 p. 24-137
Main Authors 髙田, 碧, 下方, 浩史, 八谷, 寛, 小坂井, 留美, 大塚, 礼, 丹下, 智香子, 西田, 裕紀子, 洪, 英在, 太田, 充彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本公衆衛生学会 2025
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ISSN0546-1766
2187-8986
DOI10.11236/jph.24-137

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Summary:目的 高年齢労働者の増加に伴い,労働災害被災者における高齢者割合が増加している。高齢労働者の労働災害を予防する上で,中年期から高齢期にかけての加齢に伴う心身の機能低下の特徴を理解することが重要である。本研究は中年期から高齢期にかけての心身機能の特徴を明らかにすることを目的とし,中年期から高齢期にかけての労働衛生上の課題について考察する。方法 「国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究(National Institute for Longevity Sciences - Longitudinal Study of Aging:NILS-LSA)」第7次調査(2010–2012年)に参加した40~84歳の地域住民2,270人(男性1,153人,女性1,117人)を解析対象者とした。調査参加日に聴覚機能,視覚機能,平衡機能,運動能力,歩行機能,認知機能,精神的健康度,骨密度を測定し,性・年齢階級別(40–44,45–54,55–64,65–74,75–84歳)に記述統計量およびzスコア(40–44歳を基準)を算出した。P<0.05(zスコア:±1.96以上)を統計的有意とみた。結果 機能間の比較では,性別に40–44歳を基準とした際の,75–84歳での機能低下(zスコア(正または負)の絶対値)が大きかった項目として,男女ともに聴力(気導8,000 Hzのzスコア絶対値:4.78(男性),4.91(女性)),次いで男性では良眼近見常用視力(4.42),女性では情報処理能力(符号のzスコア絶対値:3.94)の他,男女ともに筋持久力(上体起こしのzスコア絶対値:2.73(男性),2.38(女性))が挙げられた。一方,男女ともに年齢による差が小さかった項目(zスコアの絶対値が男女ともに全年齢群で0.5未満)として歩調,抑うつ得点,生活満足度が挙げられた。結論 年齢階級差が最も大きい項目は,男女とも聴力(とくに高周波数帯域)であり高齢群ほど機能低値を示した。その他,近見常用視力や情報処理能力,筋持久力の年齢階級差(高齢群で機能低値)が大きかった。一方,歩調や精神的健康度は,年齢による明らかな差異を認めなかった。加齢に伴って生じる可能性がある心身機能の変化の特徴を理解した上での労働衛生対策が望まれる。
ISSN:0546-1766
2187-8986
DOI:10.11236/jph.24-137