ニッケル標準液を用いる錯滴定法によるシアン化物イオン標準液の保存安定性に関する検討

シアン化物イオン標準液を約1000 mg kg-1として調製し,保存中の濃度変化に対する,溶液の水酸化カリウム濃度(0.2~1.5 mol dm-3),保存温度(8℃ 及び25℃)及び保存容器の材質(高密度ポリエチレン及びPFA)の影響を検討した.シアン化物イオンは,高純度ニッケルから調製したニッケル標準滴定液を基準として,ムレキシド(MX)を指示薬とする錯滴定法により定量した.したがって,保存している溶液を調製直後の標準液と比較する比色法等と比べると,本研究では確固とした基準に基づいて保存安定性を調べることができた.保存中のシアン化物イオン濃度の変化量は温度に大きく依存し,8℃ において-1...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in分析化学 Vol. 52; no. 1; pp. 51 - 54
Main Authors 日置, 昭治, 倉橋, 正保, 鈴木, 俊宏
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本分析化学会 2003
Online AccessGet full text
ISSN0525-1931
DOI10.2116/bunsekikagaku.52.51

Cover

More Information
Summary:シアン化物イオン標準液を約1000 mg kg-1として調製し,保存中の濃度変化に対する,溶液の水酸化カリウム濃度(0.2~1.5 mol dm-3),保存温度(8℃ 及び25℃)及び保存容器の材質(高密度ポリエチレン及びPFA)の影響を検討した.シアン化物イオンは,高純度ニッケルから調製したニッケル標準滴定液を基準として,ムレキシド(MX)を指示薬とする錯滴定法により定量した.したがって,保存している溶液を調製直後の標準液と比較する比色法等と比べると,本研究では確固とした基準に基づいて保存安定性を調べることができた.保存中のシアン化物イオン濃度の変化量は温度に大きく依存し,8℃ において-1.7~-2.8%/年であったのに対して,25℃ では-19~-26%/年の濃度変化がみられた.いずれの条件でも同一温度では水酸化カリウム濃度が高いほど濃度変化が抑えられた.また,保存容器の材質による相違はみられなかった.同時に検討したシアン化カリウムの保存安定性については,プラスチック製の容器をアルミニウム製の袋に入れて密閉し,25℃ で保存した場合,少なくとも0.10%/年劣化する可能性が示された.
ISSN:0525-1931
DOI:10.2116/bunsekikagaku.52.51