「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築」における現状と課題

目的 「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」(以下,「にも包括」)について現状の課題を明らかにし,改善策を探ること。方法 2019年から2022年までの間に日本公衆衛生学会モニタリング・レポート委員会精神保健福祉分野の活動として,「にも包括」の構築に関する情報を収集して報告書を作成した。これら一連の報告書と厚生労働省が2021年3月に公表した検討委員会のレポートを基にして,適宜必要な情報を追加した。結果 厚生労働省が公表した検討委員会の報告書には「にも包括」についての基本的な考え方と具体的な構成要素について,詳細に記述されている。精神障害者の地域定着に関して,とくにメンタルヘルス・ファー...

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Published in日本公衆衛生雑誌 p. 22-114
Main Authors 吉益, 光一, 井上, 眞人, 原田, 小夜, 藤枝, 恵, 池田, 和功, 小島, 光洋, 山田, 全啓
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本公衆衛生学会 15.04.2023
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Summary:目的 「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」(以下,「にも包括」)について現状の課題を明らかにし,改善策を探ること。方法 2019年から2022年までの間に日本公衆衛生学会モニタリング・レポート委員会精神保健福祉分野の活動として,「にも包括」の構築に関する情報を収集して報告書を作成した。これら一連の報告書と厚生労働省が2021年3月に公表した検討委員会のレポートを基にして,適宜必要な情報を追加した。結果 厚生労働省が公表した検討委員会の報告書には「にも包括」についての基本的な考え方と具体的な構成要素について,詳細に記述されている。精神障害者の地域定着に関して,とくにメンタルヘルス・ファーストエイドを基軸とする基本的姿勢は,長年の懸念であった精神障害者への差別や偏見を抜本的に解決できる可能性がある。しかしながら,2020年から続くCOVID-19パンデミックの影響を受けて,精神医療の提供体制や住まい,社会参加,人材育成など,「にも包括」の様々な構成要素が,その出だしから大きな制約を受けている。考察と結論 「にも包括」は長期在院精神障害者の地域社会への復帰と定着を主目標としている。これを達成するためには,従来の国が主体となるトップダウン方式から,現場が主体となるボトムアップの視点が不可欠になる。また,長引くCOVID-19パンデミックが精神障害者の生活様式の変化と,それに伴う精神状態に及ぼす影響について注意深く見守る必要がある。
ISSN:0546-1766
2187-8986
DOI:10.11236/jph.22-114