網膜の再生医療

近年の幹細胞研究の進歩により従来は不可能と見なされていた網膜の再生医療が実現しつつある。網膜再生医療の最初のターゲットは網膜色素上皮(RPE) であり、これに成功すればより内層の神経網膜再生へと治療開発が進む。加齢黄斑変性(AMD) はRPE の加齢劣化に起因する疾患であり、RPE を治療できれば根治治療になり得る。我々はAMD のRPE 再生治療を目指して自家iPS 細胞由来RPE 移植治療を行った。世界初のiPS 細胞治療となった移植手術は成功、主要評価項目である安全性を達成し、形態と自覚症状において治療効果を認めた。自家iPS 細胞治療は医学的に成功を収めたが、膨大な時間や費用の問題も露...

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Published in神戸市立病院紀要 Vol. 57; pp. 1 - 6
Main Author 栗本, 康夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 地方独立行政法人 神戸市民病院機構 2018
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ISSN0286-455X
2434-7590
DOI10.32301/kobecityhospital.57.0_1

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Summary:近年の幹細胞研究の進歩により従来は不可能と見なされていた網膜の再生医療が実現しつつある。網膜再生医療の最初のターゲットは網膜色素上皮(RPE) であり、これに成功すればより内層の神経網膜再生へと治療開発が進む。加齢黄斑変性(AMD) はRPE の加齢劣化に起因する疾患であり、RPE を治療できれば根治治療になり得る。我々はAMD のRPE 再生治療を目指して自家iPS 細胞由来RPE 移植治療を行った。世界初のiPS 細胞治療となった移植手術は成功、主要評価項目である安全性を達成し、形態と自覚症状において治療効果を認めた。自家iPS 細胞治療は医学的に成功を収めたが、膨大な時間や費用の問題も露わとなった。我々は実臨床で普及可能な治療を目指し、HLA マッチした他家iPS 細胞由来RPE 移植の臨床研究を進行中である。また、RPE の次の網膜再生医療のターゲットである視細胞移植でも動物実験で一定の成果を収めつつある。
ISSN:0286-455X
2434-7590
DOI:10.32301/kobecityhospital.57.0_1