高塩分耐性試験によるサケ稚魚の健康診断精度の向上
北日本では毎年約16億尾のサケ稚魚が放流されている。ふ化場では,飼育期間と放流時におけるサケ稚魚の健康状態を,客観的且つ簡便に判定する技術が望まれる。本研究では,サケ稚魚の健康診断における高塩分耐性試験の有用性を検討した。先ず,平均体重0.3-1.6 g の稚魚を塩分33-51 psu の塩水(3 psu 毎)に移行し,24時間後までの生残率を比較した。サケ稚魚は51 psu 海水でも24時間は生残する潜在力を有していたが,生残率は実験群間で変動した。一方で,多くの移行群は45 psu 海水で5時間までは95%以上の安定した生残率を示した。人為的に健康を悪化させたイクチオボド感染群,高密度飼育...
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Published in | 水産増殖 Vol. 71; no. 3; pp. 125 - 135 |
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Main Authors | , , , |
Format | Journal Article |
Language | English Japanese |
Published |
日本水産増殖学会
31.10.2023
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ISSN | 0371-4217 2185-0194 |
DOI | 10.11233/aquaculturesci.71.125 |
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Summary: | 北日本では毎年約16億尾のサケ稚魚が放流されている。ふ化場では,飼育期間と放流時におけるサケ稚魚の健康状態を,客観的且つ簡便に判定する技術が望まれる。本研究では,サケ稚魚の健康診断における高塩分耐性試験の有用性を検討した。先ず,平均体重0.3-1.6 g の稚魚を塩分33-51 psu の塩水(3 psu 毎)に移行し,24時間後までの生残率を比較した。サケ稚魚は51 psu 海水でも24時間は生残する潜在力を有していたが,生残率は実験群間で変動した。一方で,多くの移行群は45 psu 海水で5時間までは95%以上の安定した生残率を示した。人為的に健康を悪化させたイクチオボド感染群,高密度飼育群(26 kg/m3),絶食群で同様の移行試験を行った結果,塩分33 psu では移行24時間後の生残率が95%以上だった群でも,45-51 psu では移行5時間以内に85%以下に低下しており,魚の健康状態をより明瞭に反映していた。高塩分耐性試験は精度の高い健康診断を短時間で可能にできる一手法と期待される。 |
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ISSN: | 0371-4217 2185-0194 |
DOI: | 10.11233/aquaculturesci.71.125 |