根面の初期齲蝕様病変形成に及ぼす歯髄腔内圧の影響
生理的な髄腔と根面の間の圧力格差により歯髄から根面へ髄腔内液が流れていることが観察されている。それゆえ,髄腔内圧は根面齲蝕病巣の形成に影響を及ぼす機構が推察されるが,その根面齲蝕の病因としての役割は明らかではない。本研究では,髄腔内圧と根面齲蝕の形成の関連を知るためin vitroでの検討を試みた。髄腔内圧を-560,-20,+20または±OmmHgに調節したヒト歯根試料を0.1M乳酸ゲル(pH=5)に2週間浸漬した(n=6/群)。ミネラル濃度(vol%)の分布は,マイクロラジオグラフ撮影後,画像定量法(CAV)およびパラメータ解析プログラム(MDA)を用いて評価した。-560,-20,+20...
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Published in | 口腔衛生学会雑誌 Vol. 48; no. 2; pp. 217 - 221 |
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Main Authors | , , |
Format | Journal Article |
Language | English Japanese |
Published |
一般社団法人 口腔衛生学会
1998
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Subjects | |
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Summary: | 生理的な髄腔と根面の間の圧力格差により歯髄から根面へ髄腔内液が流れていることが観察されている。それゆえ,髄腔内圧は根面齲蝕病巣の形成に影響を及ぼす機構が推察されるが,その根面齲蝕の病因としての役割は明らかではない。本研究では,髄腔内圧と根面齲蝕の形成の関連を知るためin vitroでの検討を試みた。髄腔内圧を-560,-20,+20または±OmmHgに調節したヒト歯根試料を0.1M乳酸ゲル(pH=5)に2週間浸漬した(n=6/群)。ミネラル濃度(vol%)の分布は,マイクロラジオグラフ撮影後,画像定量法(CAV)およびパラメータ解析プログラム(MDA)を用いて評価した。-560,-20,+20,±OmmHg,それぞれにおける脱灰深度(l_d)は,73±19,54±15,33±10,57±13μm(mean±SD)で,一方,ミネラル喪失量(ΔZ)は順に1,953±569, 1,505±411, 918±227, 1,545±88 vol%・μmであった。コントロール群の±OmmHgと比較して,生理的レベルの+20mmHgでは脱灰深度とミネラル喪失量は約40%低く(p<0.05),また極端な減圧を行った-560mmHgでは約26%高い値を認めた。本研究の結果より髄腔内液が生理的な要因として根面病巣の形成に無視しえない影響を及ぼすことが示唆された。 |
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ISSN: | 0023-2831 2189-7379 |
DOI: | 10.5834/jdh.48.2_217 |