何がトリアージと考えられてきたのか—わが国の学術研究におけるトリアージの用法についてのスコーピングレビュー
【目的】国内学術研究におけるトリアージの用法を整理する。【方法】多領域の和文学術文献におけるトリアージの用法についてスコーピングレビューを実施した。対象文献の発行年は1990年から2023年とした。【結果】438件の文献がレビュー対象となった。トリアージの用法は「対象(者)の優先順位付け」という核を共有しつつも多義的であり、少なくとも7つの要素を含み得ることがわかった。医学系領域では、災害と救急の間では「死亡群」を含むか否かという大きな差異がみられたものの、分野ごとに具体的な局面を想定して議論する傾向があるために、トリアージの意味や文脈が安定していた。非医学系領域では、同じ分野でも文献ごとに異...
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Published in | 日本災害医学会雑誌 Vol. 30; no. 2; pp. 72 - 81 |
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Main Authors | , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本災害医学会
18.05.2025
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Subjects | |
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ISSN | 2189-4035 2434-4214 |
DOI | 10.51028/jjdisatmed.30.2_72 |
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Summary: | 【目的】国内学術研究におけるトリアージの用法を整理する。【方法】多領域の和文学術文献におけるトリアージの用法についてスコーピングレビューを実施した。対象文献の発行年は1990年から2023年とした。【結果】438件の文献がレビュー対象となった。トリアージの用法は「対象(者)の優先順位付け」という核を共有しつつも多義的であり、少なくとも7つの要素を含み得ることがわかった。医学系領域では、災害と救急の間では「死亡群」を含むか否かという大きな差異がみられたものの、分野ごとに具体的な局面を想定して議論する傾向があるために、トリアージの意味や文脈が安定していた。非医学系領域では、同じ分野でも文献ごとに異なるトリアージの局面が取り上げられており、各論者が各局面のトリアージを議論する結果、複数のトリアージ理解が併存する状況がみられた。【結語】用法の差異を踏まえたうえで、トリアージの学際的議論が交わされることが期待される。 |
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ISSN: | 2189-4035 2434-4214 |
DOI: | 10.51028/jjdisatmed.30.2_72 |