第26回日本脳神経超音波学会 教育文化講演 Serendipityと創造性

はじめに 全く思いがけないことに,2000年10月10日,ノーベル財団から『電気を通すプラスチックの発見は「有機物は電気を通さない絶縁体」という常識を覆す画期的で,独創的な研究成果である』という発表があり,20世紀最後の年のノーベル化学賞を受賞することになった. 大学院を終え助手として大学に奉職するようになってから,2000年3月に定年退官するまでの34年間,高分子合成に関するさまざまな研究を行った.一貫して行った研究はアセチレンの重合反応に関することであった.研究を始めた当初は反応機構の解明が当面の目標だったので,電気を通す有機化合物に全く興味を持たなかったわけではないが,将来そのような研究...

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Published inNeurosonology:神経超音波医学 Vol. 20; no. 1; pp. 2 - 6
Main Author 白川, 英樹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人日本脳神経超音波学会 2007
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Summary:はじめに 全く思いがけないことに,2000年10月10日,ノーベル財団から『電気を通すプラスチックの発見は「有機物は電気を通さない絶縁体」という常識を覆す画期的で,独創的な研究成果である』という発表があり,20世紀最後の年のノーベル化学賞を受賞することになった. 大学院を終え助手として大学に奉職するようになってから,2000年3月に定年退官するまでの34年間,高分子合成に関するさまざまな研究を行った.一貫して行った研究はアセチレンの重合反応に関することであった.研究を始めた当初は反応機構の解明が当面の目標だったので,電気を通す有機化合物に全く興味を持たなかったわけではないが,将来そのような研究にテーマを変えることは夢にも思わなかった.ところがひょんなことから,というよりは思わぬ失敗実験のお陰により,これまで粉末でしか得られなかったアセチレンの重合体であるポリアセチレンが薄膜状で合成できることが分かった.その薄膜状のポリアセチレンを試料とすることにより,とんとん拍子で目的とする研究が進み,数年で目的とする研究を終えることができた.
ISSN:0917-074X
DOI:10.2301/neurosonology.20.2