口蓋裂早期手術患者の術後の言語 管理と言語成績に関する臨床的研究
口蓋裂患者の口蓋形成術が早期化するにつれて,術後の言語治療の内容や方法も大幅に変化している, すなわち従来の言語治療は,構音障害の改善を中心とした正常言語の獲得であったのに対し,現在は早期手術による低年齢児の術後を言語面から管理することによって,言語障害の発生を未然に防止し,正常な言語発達への進展を見まもることが,言語治療士の受け持つ最も重要な責任分野とされている. 今回,いずれも2歳未満に口蓋形成術を受け,その後の言語管理を行なった最近10年間における102症例について,言語治療室開設前5年間と,開設後5年間の前半(Group1),後半(Group2)の2群に分け,言語管理の内容および方法の...
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Published in | 日本口蓋裂学会雑誌 Vol. 3; no. 1; pp. 10 - 30 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本口蓋裂学会
1978
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Online Access | Get full text |
ISSN | 0386-5185 2186-5701 |
DOI | 10.11224/cleftpalate1976.3.1_10 |
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Summary: | 口蓋裂患者の口蓋形成術が早期化するにつれて,術後の言語治療の内容や方法も大幅に変化している, すなわち従来の言語治療は,構音障害の改善を中心とした正常言語の獲得であったのに対し,現在は早期手術による低年齢児の術後を言語面から管理することによって,言語障害の発生を未然に防止し,正常な言語発達への進展を見まもることが,言語治療士の受け持つ最も重要な責任分野とされている. 今回,いずれも2歳未満に口蓋形成術を受け,その後の言語管理を行なった最近10年間における102症例について,言語治療室開設前5年間と,開設後5年間の前半(Group1),後半(Group2)の2群に分け,言語管理の内容および方法の差が, 言語成績に及ぼす影響について比較検討した. 満6歳までに正常言語を獲得した完全治癒例は,Group1で全体の83.7%,Group2で86.8%であり, 両群間に有意差を認めなかった.完全治癒例のうち,術後の経過観察治療のみで構音治療を必要とせずに正常言語を獲得した症例は,Group1が34.7%に対し,Group2は64.2%であり,有意の差が認められた.このうちGroup2の院内手術例は82.8%と最も良好な成績を示した.破裂型別の成績では,唇顎口蓋裂群に言語管理の内容に左右されやすい傾向が認められたが,手術時年齢,性差,顎態,前歯部および臼歯部咬合状態と言語成績は,有意差は認められなかった.Group2の成績が優れている要因としては術後の言語管理開始時期が早いこと,鼻咽腔閉鎖機能不全例に対するspeech aidの早期装着,歯離虫予防の効果,治療に対する母親の望ましい態度などが考えられた. 以上から,口蓋裂患者の術後の言語成績は,言語管理の開始時期が早いほど良好な成績を示す傾向があり,しかもその内容には,歯科領域における長期にわたるcareが不可欠であることを考えると,歯科系病院において,術者と直結した体制で行なうことが,最も有効であると思われた. |
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ISSN: | 0386-5185 2186-5701 |
DOI: | 10.11224/cleftpalate1976.3.1_10 |