硬膜外麻酔分娩における助産ケア
様々な価値観が存在するダイバーシティの社会では、出産の当事者である女性たちが様々な選択肢から自分らしい出産方法を選ぶことができる柔軟な環境を 用意し、自分で意思決定できるようにエンパワーすることが重要である。その選 択肢の一つとしての無痛分娩は我が国でも増加傾向を辿り、昨年新たに発表され た厚生労働省の医療施設調査結果では、2023 年の無痛分娩の実施率は全分娩 の13.8%であった。当施設でも、麻酔科医師が 24 時間常駐し、夜間・休日を含め 産婦のニーズに合わせて無痛分娩を提供することが可能となった 2013 年以降そ の割合は年々急速に増加している。2023 年には無痛分娩率は総経膣分娩...
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Published in | 看護薬理学カンファレンス p. S1-3 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
公益社団法人 日本薬理学会
2025
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Summary: | 様々な価値観が存在するダイバーシティの社会では、出産の当事者である女性たちが様々な選択肢から自分らしい出産方法を選ぶことができる柔軟な環境を 用意し、自分で意思決定できるようにエンパワーすることが重要である。その選 択肢の一つとしての無痛分娩は我が国でも増加傾向を辿り、昨年新たに発表され た厚生労働省の医療施設調査結果では、2023 年の無痛分娩の実施率は全分娩 の13.8%であった。当施設でも、麻酔科医師が 24 時間常駐し、夜間・休日を含め 産婦のニーズに合わせて無痛分娩を提供することが可能となった 2013 年以降そ の割合は年々急速に増加している。2023 年には無痛分娩率は総経膣分娩数の86.3%と高い割合を占めており、無痛分娩へのニーズの高まりを日々感じている。では、出産方法の一つとして無痛分娩が選ばれる様になってきた今、助産師に は何が求められるのだろうか。無痛分娩においては、自然分娩に比べ分娩第2 期の遷延や回旋異常、器械分娩率の上昇等が明らかになっており、医療介入の 必要性が高くなるのは事実である。そのため、無痛分娩に関わる助産師には、麻 酔の基本的な知識を持つ必要性だけでなく、産科学と麻酔学の双方から分娩を 理解し、妊産婦の全身を診ることができる力に加え、医師との協働が必須になる。 当施設では、安全で快適な無痛分娩を支援するための取り組みとして、産科医 師・麻酔科医師・助産師が、それぞれの立場からディスカッションし、産婦の分 娩方針を決定・共有するためのカンファレンスの場を持っている。また、無痛分娩 中は、産婦は多くのモニターやルート類に囲まれるなど、様々な制限のある管理 的な環境下に置かれることになる。しかし、無痛分娩においても、女性に寄り添 い産む力を最大限に引き出すという助産の根幹は普遍的である。助産師は、正し い無痛分娩の知識と理解の下、ベッド上でできる姿勢の工夫やヨガ、ベッドから 離床してのエクササイズ等も取り入れ、産婦が主体的に自身の分娩に取り組める ように支援している。分娩に関わる助産師の最大で最終の目標は、「安全で快適な分娩とその後に 続く豊かな母子関係の構築」である。この目標の下に女性を支援するために、助 産師には何が求められ、何ができるのか、医師といかに協働していくのか。この シンポジウムでは、当施設での無痛分娩における助産ケアの実践の紹介を通して、 助産師の役割と助産ケアについて考えていきたい。 |
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Bibliography: | 2025.1_S1-3 |
ISSN: | 2435-8460 |
DOI: | 10.34597/npc.2025.1.0_S1-3 |