症例 大動脈炎症候群に肉芽腫性静脈炎による上大静脈症候群を合併した1症例

症例は45歳女性.昭和48年頃より左手の脱力感を覚え始め,昭和53年左橈骨動脈拍動の欠如を指摘され当院胸部外科に入院した.大動脈造影にて,左鎖骨下動脈の完全閉塞と右腕頭および左右総頸動脈の狭窄を認め,大動脈炎症候群と診断された.昭和58年頃より頸部,顔面の腫脹をくり返し,同年12月上大静脈症候群の疑いにて入院となった.静脈造影にて右鎖骨下静脈の求心性狭窄と左右腕頭および上大静脈の壁不整を伴う狭窄像が認められた.利尿剤の投与により顔面および頸部の浮腫は改善し,その後の静脈造影では右鎖骨下静脈の求心性狭窄は著しく改善していたが,左腕頭静脈および上大静脈については著変を認めなかった.頸静脈の生検では...

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Published in心臓 Vol. 18; no. 12; pp. 1419 - 1424
Main Authors 高安, 徹雄, 椎名, 明, 手塚, 恵理子, 藤田, 俊弘, 土谷, 正雄, 柳沼, 淑夫, 細田, 瑳一, 大原, 務, 福島, 鼎, 長谷川, 嗣夫, 高橋, 敦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 1986
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Summary:症例は45歳女性.昭和48年頃より左手の脱力感を覚え始め,昭和53年左橈骨動脈拍動の欠如を指摘され当院胸部外科に入院した.大動脈造影にて,左鎖骨下動脈の完全閉塞と右腕頭および左右総頸動脈の狭窄を認め,大動脈炎症候群と診断された.昭和58年頃より頸部,顔面の腫脹をくり返し,同年12月上大静脈症候群の疑いにて入院となった.静脈造影にて右鎖骨下静脈の求心性狭窄と左右腕頭および上大静脈の壁不整を伴う狭窄像が認められた.利尿剤の投与により顔面および頸部の浮腫は改善し,その後の静脈造影では右鎖骨下静脈の求心性狭窄は著しく改善していたが,左腕頭静脈および上大静脈については著変を認めなかった.頸静脈の生検では壁の肥厚とそれに伴う内腔の狭窄が認められ,また円形細胞の浸潤,巨細胞を含む肉芽腫および巨細胞の弾性線維貪食像を認めた.以上のことから深部静脈炎による上大静脈症候群と診断し,この病理組織所見が大動脈炎症候群の罹患動脈病変の所見によく一致するものであることから,静脈炎が大動脈炎症候群と同様の機序で発症した可能性が考えられた.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.18.12_1419