疫学からみる日本人死因構造の変化:加齢・時代・世代効果
本稿では人口動態統計の死因(原死因)情報を活用し,直近20年間の日本人の死因構造にどのような変化があるのかを,加齢・時代・世代効果に着目して観察し考察する.悪性新生物による粗死亡率は近年急増しているが,粗死亡率には加齢・時代・世代効果が含まれる.今回,人口動態統計6時点(1995年,2000年,2005年,2010年,2015年,2020年)の19年齢階級(0歳から94歳までの5歳刻み19群)の死因別死亡率(人口10万人あたりの粗死亡率)を用い,Mean polish法により死亡率の加齢効果,時代効果,世代効果を抽出した.解析の結果,加齢に伴い中年期以降で悪性新生物による死亡が増加し,後期高齢...
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Published in | 日本老年医学会雑誌 Vol. 60; no. 1; pp. 11 - 18 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本老年医学会
25.01.2023
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Subjects | |
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ISSN | 0300-9173 |
DOI | 10.3143/geriatrics.60.11 |
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Summary: | 本稿では人口動態統計の死因(原死因)情報を活用し,直近20年間の日本人の死因構造にどのような変化があるのかを,加齢・時代・世代効果に着目して観察し考察する.悪性新生物による粗死亡率は近年急増しているが,粗死亡率には加齢・時代・世代効果が含まれる.今回,人口動態統計6時点(1995年,2000年,2005年,2010年,2015年,2020年)の19年齢階級(0歳から94歳までの5歳刻み19群)の死因別死亡率(人口10万人あたりの粗死亡率)を用い,Mean polish法により死亡率の加齢効果,時代効果,世代効果を抽出した.解析の結果,加齢に伴い中年期以降で悪性新生物による死亡が増加し,後期高齢期以降は心疾患,肺炎,脳血管疾患による死亡が急増すること(加齢効果),近年ほど脳血管疾患,心疾患や肺炎による死亡率が減少していること(時代効果),明治後期(1906年)生まれ以降の世代は,それ以前の世代の心疾患,肺炎,脳血管疾患による死亡よりも悪性新生物による死亡率が高いこと(世代効果)が示された.時代効果は加齢効果と異なり,社会情勢や介入により可変的な要素をもつ.もし脳血管疾患や心疾患の危険因子となる高血圧等の生活習慣病が今後更に予防・改善されるなら,脳血管疾患や心疾患による死亡率は長期的に低下していくであろう. |
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ISSN: | 0300-9173 |
DOI: | 10.3143/geriatrics.60.11 |