AI時代の看護に求められる倫理

人工知能(AI)開発および社会実装の急速な進展により、医療・看護の稜威においてもAI 技術の活用が考えられる。AIを活用は、診療支援、患者モニタリング、介護ロボッ トの導入など、多くの可能性が広がる一方で、看護のあり方や倫理が新たな局面を迎え ていると言える。本発表では、医療倫理・看護倫理の五原則である「自律尊重」「無危 害」「善行」「正義」「誠実」の観点から、AI 時代における看護の倫理課題について 検討する。自律尊重原則 AI が患者の意思決定をどのように支援すべきかが問われる。AI が提供する診断やケアプランの提案は、患者の意思決定を支援すべきもので、AI が活用される医療現場 において...

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Published in看護薬理学カンファレンス p. S2-4
Main Author 中澤, 栄輔
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本薬理学会 2025
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Summary:人工知能(AI)開発および社会実装の急速な進展により、医療・看護の稜威においてもAI 技術の活用が考えられる。AIを活用は、診療支援、患者モニタリング、介護ロボッ トの導入など、多くの可能性が広がる一方で、看護のあり方や倫理が新たな局面を迎え ていると言える。本発表では、医療倫理・看護倫理の五原則である「自律尊重」「無危 害」「善行」「正義」「誠実」の観点から、AI 時代における看護の倫理課題について 検討する。自律尊重原則 AI が患者の意思決定をどのように支援すべきかが問われる。AI が提供する診断やケアプランの提案は、患者の意思決定を支援すべきもので、AI が活用される医療現場 においては患者の価値観を尊重したケアを行う看護師とAI の関わり方が問われる。特 に高齢者や認知症患者など、意思決定能力が低下している場合には、AI の活用がど のように患者の尊厳を守るかが重要な課題となる。無危害原則 AI の活用が患者に対して予期しないリスクをもたらす可能性を慎重に評価しなければならない。たとえば、AI が誤った診断を下した場合、医療者がそれをどのように補完・ 監督するかが重要となる。また、AIによるケアの画一化が患者個々のニーズに適応でき ない場合、患者に対する潜在的な害となりうる。さらに、AIを使わないリスクも考慮に入 れなければならない。善行原則 AIを活用することで患者ケアの質が向上し、より良い医療が提供される可能性がある。しかし、AI の導入が医療従事者の負担を軽減する一方で、看護師が患者との関係構 築に割く時間が減少する可能性もある。AIを倫理的に適用するためには、看護師が患 者との関係を維持しながら、適切にAIを活用するバランスが求められる。正義原則 AI が提供する医療サービスの公平性が問われる。例えば、AIによる診療やケアの質が経済的・地域的な格差を生まないようにすることが重要である。また、AI が学習す るデータがバイアスを含む場合、不公平な診療結果をもたらす可能性がある。誠実の原則 看護師はAIと協働する際に、その限界や倫理的課題を正しく理解し、患者や家族に対して適切な情報を提供する責任がある。特に、AIによる意思決定の透明性を確保し、 患者や家族が納得できる形で医療を提供することが求められる。本発表では、これらの倫理原則をもとに、AI 時代における看護師の役割と責任につ いて考察し、AIと人間が協働する新たな看護の在り方を提案する。倫理的視点を持ち ながらAIを適切に活用することで、より良い患者ケアの実現が可能となることを示す。
Bibliography:2025.1_S2-4
ISSN:2435-8460
DOI:10.34597/npc.2025.1.0_S2-4