症例 アスピリン,ジピリダモール,ワーファリンの併用療法にて左房内血栓の縮小をみたFallot四徴症兼僧帽弁狭窄症の1幼児例

左房内血栓症は,僧帽弁狭窄症の10~30%に合併する疾患であるが,僧帽弁狭窄症そのものが小児では少ないため,小児科領域での報告は少ない.今回我々は,Fallot四徴症,肺動脈閉鎖に僧帽弁狭窄症を合併した幼児が,心不全症状の悪化とともに,左房内血栓を生じ,アスピリン,ジピリダモール,ワーファリンにて縮小を認めたので報告する.症例は3歳の男児で,主訴はチアノーゼ,呼吸困難.生後4カ月に当院に入院し,Fallot四徴症,肺動脈閉鎖,主要側副血管(major aortopulmonary collateral artery,以下MAPCA),僧帽弁狭窄症と診断し,内科的に心不全,低酸素血症に対する治療...

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Published in心臓 Vol. 22; no. 11; pp. 1285 - 1289
Main Authors 小須田, 貴史, 小野, 真康, 田代, 雅彦, 田端, 裕之, 小林, 敏宏, 曽根, 克彦, 小林, 富男
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 1990
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo1969.22.11_1285

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Summary:左房内血栓症は,僧帽弁狭窄症の10~30%に合併する疾患であるが,僧帽弁狭窄症そのものが小児では少ないため,小児科領域での報告は少ない.今回我々は,Fallot四徴症,肺動脈閉鎖に僧帽弁狭窄症を合併した幼児が,心不全症状の悪化とともに,左房内血栓を生じ,アスピリン,ジピリダモール,ワーファリンにて縮小を認めたので報告する.症例は3歳の男児で,主訴はチアノーゼ,呼吸困難.生後4カ月に当院に入院し,Fallot四徴症,肺動脈閉鎖,主要側副血管(major aortopulmonary collateral artery,以下MAPCA),僧帽弁狭窄症と診断し,内科的に心不全,低酸素血症に対する治療を開始し,外来にて経過観察していた.2歳6カ月時,心不全,呼吸困難で当院再入院となったが,入院時の断層心エコーおよびMRIにて左房内に血栓が確認された.心不全の進行や高ヘマトクリット血症の増強などにより左房内に血栓が生じたと考え,アスピリン,ジピリダモール,ワーファリンの3者による抗血栓療法を開始し,断層心エコーにて左房内血栓の様子を経過観察していたところ,治療開始2週頃より血栓の縮小を認めた.治療中,全身の塞栓症を疑わせる症状,重篤な出血などはなく,その後も新しい血栓の予防として,抗血栓療法を継続中である.本症例は,心厨細動を合併せずに血栓発生したまれな小児例であると思われ報告した.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.22.11_1285