症例 右冠動脈の閉塞を伴った先天性右冠動静脈瘻の1症例

症例は10歳女児で心雑音を主訴に来院した.心エコーにて左右冠動脈の著明な拡大と,右室への短絡血流を認め,心臓カテーテル検査・心血管造影を施行した.痩孔は1カ所のみで右室に開口していた.右冠動脈はエコー上は拡大していたが造影にては起始部より著明に狭小化し,過去に拡大していた冠動脈が一度閉塞した後,再開通したような所見であった,左冠動脈は前下降枝,回旋枝共に著明に拡張蛇行しており,前下降枝より拡張蛇行した2本の側副血管が,拡大した右冠動脈のSeg,3以降に連結していた.左右短絡は少く,心筋シンチグラム,運動負荷心電図にても虚血性変化は認められなかった. 本症例は血行動態的には単冠動脈と同等と考えら...

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Published in心臓 Vol. 22; no. 10; pp. 1191 - 1195
Main Authors 小須田, 貴史, 田代, 雅彦, 武井, 克己, 田端, 裕之, 島田, 公代, 小林, 敏宏, 曽根, 克彦, 小林, 富男, 荒木, 千晶, 篠原, 真, 小川, 竜
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 1990
Subjects
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo1969.22.10_1191

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Summary:症例は10歳女児で心雑音を主訴に来院した.心エコーにて左右冠動脈の著明な拡大と,右室への短絡血流を認め,心臓カテーテル検査・心血管造影を施行した.痩孔は1カ所のみで右室に開口していた.右冠動脈はエコー上は拡大していたが造影にては起始部より著明に狭小化し,過去に拡大していた冠動脈が一度閉塞した後,再開通したような所見であった,左冠動脈は前下降枝,回旋枝共に著明に拡張蛇行しており,前下降枝より拡張蛇行した2本の側副血管が,拡大した右冠動脈のSeg,3以降に連結していた.左右短絡は少く,心筋シンチグラム,運動負荷心電図にても虚血性変化は認められなかった. 本症例は血行動態的には単冠動脈と同等と考えられる.すなわち,左冠動脈の愈流量の低下は直接生命予後に結びつく危険性が大きい.したがって,特に左冠動脈に生ずる可能性のある粥状硬化症や血栓による心筋虚血に対しては,長期にわたる注意深い観察が必要であると思われる.右冠動脈Seg.1,2の閉塞を伴った右冠動脈右室痩の報告はなく,極めてまれな症例と思われる.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.22.10_1191