研究 開心術後早期に発症した急性肝腎不全の病態に関する研究

1973年1月から1986年12月までの14年間に,開心術後早期に急性肝腎不全を発症した13例(発生頻度0.85%)の病因,臨床経過,死因および病理解剖所見などを検討した.基礎疾患は,複雑心奇形が5例で,僧帽弁病変を伴った後天性弁膜症が8例であった.開心術後早期の急性肝腎不全は,perioperative shockか難治性心不全が主因であった.perioperative shockが主因のもの(I群)は4例で,急性腎不全はすべて早期乏尿型であった.そのうち術前に肝障害を認めなかった2例は,SGPTなどの肝細胞逸脱酵素の血中濃度の急激な上昇と,それらの速やかな回復を特徴とする肝炎型急性肝不全を...

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Published in心臓 Vol. 20; no. 12; pp. 1384 - 1392
Main Authors 富樫, 賢一, 諸, 久永, 中沢, 聡, 横沢, 忠夫, 江口, 昭治
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 1988
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Summary:1973年1月から1986年12月までの14年間に,開心術後早期に急性肝腎不全を発症した13例(発生頻度0.85%)の病因,臨床経過,死因および病理解剖所見などを検討した.基礎疾患は,複雑心奇形が5例で,僧帽弁病変を伴った後天性弁膜症が8例であった.開心術後早期の急性肝腎不全は,perioperative shockか難治性心不全が主因であった.perioperative shockが主因のもの(I群)は4例で,急性腎不全はすべて早期乏尿型であった.そのうち術前に肝障害を認めなかった2例は,SGPTなどの肝細胞逸脱酵素の血中濃度の急激な上昇と,それらの速やかな回復を特徴とする肝炎型急性肝不全を呈した.一方,術前より肝障害を認めた2例は,STB値の急激な上昇と肝性昏睡を特徴とする劇症肝炎型急性肝不全を呈した.難治性心不全が主因のもの(II群)は9例で,乳幼児例2例は早期乏尿型を,後天性弁膜症例7例は後期乏尿型急性腎不全を呈した.急性肝不全は9例とも,STB値の漸増を特徴とするうっ血肝型を呈した.13例中肝炎型急性肝不全を呈したI群の2例のみが生存し,それ以外の11例は死亡した(致死率84.6%).死因としては,気道や消化管からの大量出血が5例と最も多く,肺炎や敗血症などの感染症が4例と次に多かった.11例中8例は死亡時MOFの状態であった.今後は,それぞれの病態に応じた治療を行うことが,成績向上につながると考えられた.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.20.12_1384