リボゾームDNA 遺伝子を標的としたLightCycler™リアルタイムPCR ・融解温度分析法を用いた臨床分離真菌株の鑑別と同定-Scedosporium 属に着目して
今回我々は,真菌リボゾームDNA 遺伝子のinternal transcribed spacer 2 (ITS2)とD1/D2 の2 つの領域を標的としたLightCycler™リアルタイムPCR・融解温度(Tm) 分析法を開発し,本法を,Scedosporium 属を含む臨床分離真菌株の鑑別と同定に応用した.菌株は2008 年8 月から2016 年7 月までの間に当院で分離された糸状真菌5 菌種と酵母様真菌8 菌種を対象とした。LightCycler™ 2.0 を用いてITS2 とD1/D2 のPCR 産物のT m 値を求め,2 つのT m 値の組み合わせから分離株を鑑別・同定した.S. p...
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Published in | 天理医学紀要 Vol. 22; no. 2; pp. 71 - 78 |
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Main Authors | , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | English Japanese |
Published |
公益財団法人 天理よろづ相談所 医学研究所
25.12.2019
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Subjects | |
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ISSN | 1344-1817 2187-2244 |
DOI | 10.12936/tenrikiyo.22-016 |
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Summary: | 今回我々は,真菌リボゾームDNA 遺伝子のinternal transcribed spacer 2 (ITS2)とD1/D2 の2 つの領域を標的としたLightCycler™リアルタイムPCR・融解温度(Tm) 分析法を開発し,本法を,Scedosporium 属を含む臨床分離真菌株の鑑別と同定に応用した.菌株は2008 年8 月から2016 年7 月までの間に当院で分離された糸状真菌5 菌種と酵母様真菌8 菌種を対象とした。LightCycler™ 2.0 を用いてITS2 とD1/D2 のPCR 産物のT m 値を求め,2 つのT m 値の組み合わせから分離株を鑑別・同定した.S. prolificans 3 株のITS2 とD1 / D2 領域のPCR 産物のTm 値(平均値±標準偏差[SD])は,それぞれ89.6 ± 0.20 °C と89.9 ± 0.07 °C,S. apiospermum 1 株のTm 値は,それぞれ91.0 °C と91.7 °C で,2 菌種を鑑別することができた.Scedosporium 属のT m 値はAspergillus 属のそれよりも低く,これらの2 つの糸状真菌の鑑別も可能であった.酵母様真菌では,8 菌種中7 菌種で特異的なTm 値プロフィルを示した.例外的に,Candida krusei はS. apiospermum に類似のTm 値プロフィルを示した.従って,検討した13 菌種中9 菌種の鑑別・同定が可能であった.ATCC 株を用いた検出感度は,C. albicans ではITS2,D1/D2 とも1 × 104 CFU/mL,A. fumigatus ではITS2 が1 × 105 CFU/mL,D1/D2 が1 × 102 CFU/mL であった. 測定を10 回繰り返しT m 値の再現性を確認したところ,ITS2 とD1 / D2 領域のSD は,それぞれ± 0.04 –0.21 °Cと± 0.02–0.05 °C であった.今回開発したLightCycler™リアルタイムPCR・Tm 分析法は,臨床分離真菌の鑑別・同定に関する迅速かつ信頼性の高い情報を提供し,有効な抗真菌治療を早期に開始するうえで価値が高い. |
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ISSN: | 1344-1817 2187-2244 |
DOI: | 10.12936/tenrikiyo.22-016 |