臨床 僧帽弁位に用いた傾斜型disc弁Bicer-Val弁の弁輪組織増殖による開放障害
傾斜型disc弁Bicer-Va1弁を用いて僧帽弁置換を行った25例のうち4例が,2年から3年半後に,弁輪の組織増殖による人工弁開放障害によって,めまいや失神を起こしたため,再弁置換を行った(4.2%/患者・年). 初発症状は,弁置換後7~29カ月後に生じた,動悸,めまいであった.心房細動の3例が,弁置換後22~38カ月後に失神を起こした.失神をきたさなかった1例のみ洞調律であった.明らかな心不全症状を呈した例はなかった.断層心エコー図では,容易に人工弁が開放しない心周期のあることを認め,人工弁周辺の異常エコー像を認めなかった.再弁置換術の麻酔導入時に,2例の人工弁が全く開かなくなった.うち1...
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Published in | 心臓 Vol. 21; no. 11; pp. 1293 - 1299 |
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Main Authors | , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
公益財団法人 日本心臓財団
1989
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ISSN | 0586-4488 2186-3016 |
DOI | 10.11281/shinzo1969.21.11_1293 |
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Summary: | 傾斜型disc弁Bicer-Va1弁を用いて僧帽弁置換を行った25例のうち4例が,2年から3年半後に,弁輪の組織増殖による人工弁開放障害によって,めまいや失神を起こしたため,再弁置換を行った(4.2%/患者・年). 初発症状は,弁置換後7~29カ月後に生じた,動悸,めまいであった.心房細動の3例が,弁置換後22~38カ月後に失神を起こした.失神をきたさなかった1例のみ洞調律であった.明らかな心不全症状を呈した例はなかった.断層心エコー図では,容易に人工弁が開放しない心周期のあることを認め,人工弁周辺の異常エコー像を認めなかった.再弁置換術の麻酔導入時に,2例の人工弁が全く開かなくなった.うち1例は低心拍出量症候群のため死亡した. 摘出人工弁の左室側縫着部に弁輪からわずかにはみ出した組織増殖があり,discが開く際の抵抗になっていた.当院で他の傾斜型disc弁を使用した19例中17例の経過観察では,組織増殖による弁機能不全がなかった.僧帽弁位Bicer-Val弁は, 弁輪増殖によって弁開放障害を起こしやすいことが疑われる.組織増殖は軽微であるため,人工弁の弁輪の高さが十分であれば,discの回転する軌跡を守れたと考えられた. |
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ISSN: | 0586-4488 2186-3016 |
DOI: | 10.11281/shinzo1969.21.11_1293 |