テンポラリーアンカレッジデバイスを用いた下顎大臼歯遠心移動により治療を行った過蓋咬合を伴うAngle Cl. Ⅲ前歯反対咬合症例

テンポラリーアンカレッジデバイスの出現により,矯正治療における歯の移動限界は拡大した.一方,治療方針決定のための明確な診断基準は定まっていない現状となっている.本論文では,テンポラリーアンカレッジデバイスの使用により,非外科・非抜歯にて矯正治療を行った骨格性反対咬合の矯正治療について考察し報告する.患者は初診時年齢30 歳5 か月の女性で,受け口の改善を主訴に来院した.症例は前歯の反対咬合と過蓋咬合を伴う骨格性下顎前突で,上下顎前歯の早期接触による下顎の機能的前方誘導を伴うものの,側面頭部X 線規格写真分析からは外科矯正の可能性も示唆された.そこで下顎位確認のため前歯の早期接触を解消後に再評価...

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Published inDental Medicine Research Vol. 33; no. 2; pp. 185 - 192
Main Authors 間所, 睦, 宮崎 芳和
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 昭和大学・昭和歯学会 2013
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Summary:テンポラリーアンカレッジデバイスの出現により,矯正治療における歯の移動限界は拡大した.一方,治療方針決定のための明確な診断基準は定まっていない現状となっている.本論文では,テンポラリーアンカレッジデバイスの使用により,非外科・非抜歯にて矯正治療を行った骨格性反対咬合の矯正治療について考察し報告する.患者は初診時年齢30 歳5 か月の女性で,受け口の改善を主訴に来院した.症例は前歯の反対咬合と過蓋咬合を伴う骨格性下顎前突で,上下顎前歯の早期接触による下顎の機能的前方誘導を伴うものの,側面頭部X 線規格写真分析からは外科矯正の可能性も示唆された.そこで下顎位確認のため前歯の早期接触を解消後に再評価を行った結果,テンポラリーアンカレッジデバイスを利用した下顎臼歯の遠心移動を前提として,非外科・非抜歯の方針と診断した.治療経過は,動的治療期間2 年5 か月にて全顎的に被蓋が確立されたのでエッジワイズ装置を撤去し保定観察開始とした.本治療を通じ,テンポラリーアンカレッジデバイスの有用性が示されたと同時に,骨格性下顎前突で外科矯正と非外科の治療方針のボーダーラインとなる症例における明確な判断基準の必要性が示唆された.
ISSN:1882-0719
2186-540X
DOI:10.7881/dentalmedres.33.185