症例 “いわゆる”ポックリ病からの生還例と思われる1例

ポックリ病と思われる臨床経過をとりながら,数時間後に回復した42歳男性の1例を経験した.失神発作時,舌根沈下がみられ,シ鷲ック状態ではあったが,不整脈はみられなかった.心電図でST上昇(V1,V2)がみられ,意識回復後の心エコーで右室自由壁の収縮能低下,CPK,GOT,LDHの一過性上昇がみられた.冠動脈造影では冠狭窄は見られず,著しい左冠優位であった.Ergonovine負荷では,冠動脈に有意な冠攣縮は引き起こされなかった.8カ月後,右室自由壁の収縮能は改善していたが,心電図ST上昇(V1,V2)は持続していた.当症例では,環境因子(慢性的な過労,飲酒,性生活,偏食)が深い睡眠状態をもたらし...

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Published in心臓 Vol. 22; no. 10; pp. 1221 - 1226
Main Authors 元木, 賢三, 辻村, 武文
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 1990
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Summary:ポックリ病と思われる臨床経過をとりながら,数時間後に回復した42歳男性の1例を経験した.失神発作時,舌根沈下がみられ,シ鷲ック状態ではあったが,不整脈はみられなかった.心電図でST上昇(V1,V2)がみられ,意識回復後の心エコーで右室自由壁の収縮能低下,CPK,GOT,LDHの一過性上昇がみられた.冠動脈造影では冠狭窄は見られず,著しい左冠優位であった.Ergonovine負荷では,冠動脈に有意な冠攣縮は引き起こされなかった.8カ月後,右室自由壁の収縮能は改善していたが,心電図ST上昇(V1,V2)は持続していた.当症例では,環境因子(慢性的な過労,飲酒,性生活,偏食)が深い睡眠状態をもたらし,右室壁の冠不全を合併し,一過性の呼吸中枢障害を引き起こしていたのではないかと想像した,Nifedipineを継続投与しているが,その後は再び人一倍元気に,普通生活を送っている. ポックリ病は生還例の報告がなく,一過性に,致死性の高い病態に陥ると思われるが,reversibleな疾患と思われ,さらに生還例を蓄積し,病態の究明が必要と思われた.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.22.10_1221