症例 血栓溶解療法とIABPにより救命しえた原発性冠動脈解離に伴う急性心筋梗塞の1例

症例は35歳の女性.出産3カ月後,全身性痙攣が出現し脳腫瘍の疑診で精査のために入院中であった.夜間睡眠中に胸部不快感と心電図異常が出現し,冠動脈造影を施行したところ右冠動脈広範にわたる解離と血栓による閉塞を認めた.直ちに血栓溶解療法を行い再疎通を得たが低血圧が遷延し,IABPを使用した.発症28時間後再び胸部不快感が出現し,再造影を施行したところ左冠動脈近位部(seg 6)に冠攣縮に伴う血栓によると思われる90%の狭窄を認め,再び血栓溶解療法を行った.心不全は遷延化したが第5病日にIABPを抜去できた.1カ月後の確認造影では,右冠動脈の解離は不変で左冠動脈に有意狭窄を認めなかった.よって左冠動...

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Published in心臓 Vol. 26; no. 11; pp. 1139 - 1143
Main Authors 土屋, 芳弘, 中島, 与志行, 権藤, 直樹, 川口, 浩, 今村, 光秀, 田原, 久史, 熊谷, 洛一郎, 井上, 燈爾, 仁位, 隆信, 荒川, 規矩男
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 1994
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo1969.26.11_1139

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Summary:症例は35歳の女性.出産3カ月後,全身性痙攣が出現し脳腫瘍の疑診で精査のために入院中であった.夜間睡眠中に胸部不快感と心電図異常が出現し,冠動脈造影を施行したところ右冠動脈広範にわたる解離と血栓による閉塞を認めた.直ちに血栓溶解療法を行い再疎通を得たが低血圧が遷延し,IABPを使用した.発症28時間後再び胸部不快感が出現し,再造影を施行したところ左冠動脈近位部(seg 6)に冠攣縮に伴う血栓によると思われる90%の狭窄を認め,再び血栓溶解療法を行った.心不全は遷延化したが第5病日にIABPを抜去できた.1カ月後の確認造影では,右冠動脈の解離は不変で左冠動脈に有意狭窄を認めなかった.よって左冠動脈の狭窄は高度の攣縮に伴う血栓形成によるものと考えられた.本症例では産後であることに加え,抗痙攣薬に対するアレルギー反応も右冠動脈解離の発症に関係したと思われる.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.26.11_1139