症例 右房原発血管肉腫の1手術例

症例は44歳の男で心タンポナーデで発症した.心膜液が純血性なので,原因究明のため心エコー,CT,心アンギオなどの検査を施行,最終的にはMRI検査で右心房原発の悪性腫瘍と診断し切除術を施行した.腫瘍は右房の前側壁に発生,肉腔に大きく増殖しており,右房前壁の心外膜面には腫瘍が一部露出して,ここからの出血が心タンポナーデの原因になったと思われた.また,一部心膜へも癒着浸潤していた.腫瘍の上下大静脈・左房への浸潤はなかったが,房室間溝までの右房前壁に浸潤がみられた.手術方針としては腫瘍部切除を中心に集学治療する方針であったので,過大な手術侵襲は避け,右室および右冠動脈には手術操作は加えず右室前壁,側壁...

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Published in心臓 Vol. 22; no. 10; pp. 1227 - 1231
Main Authors 阿部, 邦彦, 椎名, 祥隆, 佐々木, 達哉, 伊藤, 伊一郎, 新津, 勝宏, 折祖, 清蔵, 加藤, 政孝, 高山, 和夫, 小野, 貞英, 古川, 公一郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 1990
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Summary:症例は44歳の男で心タンポナーデで発症した.心膜液が純血性なので,原因究明のため心エコー,CT,心アンギオなどの検査を施行,最終的にはMRI検査で右心房原発の悪性腫瘍と診断し切除術を施行した.腫瘍は右房の前側壁に発生,肉腔に大きく増殖しており,右房前壁の心外膜面には腫瘍が一部露出して,ここからの出血が心タンポナーデの原因になったと思われた.また,一部心膜へも癒着浸潤していた.腫瘍の上下大静脈・左房への浸潤はなかったが,房室間溝までの右房前壁に浸潤がみられた.手術方針としては腫瘍部切除を中心に集学治療する方針であったので,過大な手術侵襲は避け,右室および右冠動脈には手術操作は加えず右室前壁,側壁を腫瘍とともに切除した.右房前側壁の大きな欠損部はGore Texパッチで補修した.摘出腫瘍は7.5×6.0×3.5cmで重さ145gであり,組織診断は血管肉腫であった.術後経過は良好で刺激伝導障害もみられなかった.術後3週目より放射線療法を施行し,腫瘍浸潤が疑われた右房室間溝を中心に合計52Gy照射した.さらに化学療法(Cyvadic)を2クール施行したが,術後5カ月に肺転移を認め,さらに術後6カ月目には肝転移をきたし結局術後7カ月目に小脳転移巣からの脳出血で死亡した.剖検では肺,肝に小転移巣を認め,小脳では右半球の巨大血腫が橋角部に穿破しており,転移巣からの出血と思われた.しかし,右房右室問溝には腫瘍の残存および再発はみられず,腫瘍は手術時完全に切除されていたことが示された.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.22.10_1227