近畿北部におけるニホンツキノワグマ(Ursus thibetanus japonicus)の行動特性と生息環境利用の季節変化

1995年から1997年にかけて,滋賀県朽木村においてニホンツキノワグマ(Ursus thibetanus japonicus)のメス2個体をラジオテレメトリー法により追跡し,その行動特性と生息環境利用の季節変化を明らかにした。両個体とも各年の行動圏には若干の違いがみられたものの,定着性の行動圏を有しており,調査期間中の2頭の行動圏面積は1,935 ha,2,550 haであった。行動特性および生息環境利用は季節によって変化し,冬眠から覚めてから行動範囲を拡大する春期,その範囲内の低標高地を利用する夏期,それまでの行動圏から離れた場所へ移動する初秋期,標高の高い場所を集中的に利用する秋期,行動...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in森林研究 Vol. 73; pp. 1 - 11
Main Authors 玉谷, 宏夫, 小林, 勝志, 高柳, 敦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 国立大学法人 京都大学フィールド科学教育研究センター 2024
Subjects
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:1995年から1997年にかけて,滋賀県朽木村においてニホンツキノワグマ(Ursus thibetanus japonicus)のメス2個体をラジオテレメトリー法により追跡し,その行動特性と生息環境利用の季節変化を明らかにした。両個体とも各年の行動圏には若干の違いがみられたものの,定着性の行動圏を有しており,調査期間中の2頭の行動圏面積は1,935 ha,2,550 haであった。行動特性および生息環境利用は季節によって変化し,冬眠から覚めてから行動範囲を拡大する春期,その範囲内の低標高地を利用する夏期,それまでの行動圏から離れた場所へ移動する初秋期,標高の高い場所を集中的に利用する秋期,行動圏を縮小して冬眠に入る晩秋期に分けられた。行動パターンと植生の関係をみると,夏期はス ギ・ヒノキ人工林に出現する頻度が高く,この時期にスギ(Cryptomeria japonica)やヒノキ(Chamaecyparis obtuse)に対して発生するクマハギ行動との関係性が示唆された。また,標高が高い場所の落葉広葉樹林での滞在と,大きな移動がみられた初秋期以降は,堅果類の結実状況が調査個体の行動パターンに影響を与えていることが推測された。
ISSN:1344-4174
2759-3134
DOI:10.60409/forestresearch.73.0_1